เข้าสู่ระบบあの後グレンは一人で帰れそうにないミーナを家まで送り届け、今はこの町のはずれにある裏山みたいなところでパンをかじっていた。
(人の血を見た後によく飯が食えるな。) すると周りには誰もいないはずなのにどこからか声がした。 「…お前に言われたくない。」 誰もいない空間に対し返事をするグレン。端から見ると独り言を喋ってるかのようだった。 (ハハハ!それは違いねえな!てか昨日もそうだったがあの女、ミーナだったか?お前にしちゃ珍しく一人の女をやけに守ってたようだが何かあんのか?) 「…いや、別にない。ただあの女は俺に剣術を教えてくれた俺の師匠の娘だからだ。」 (あー、あのおっさんか…って、あのおっさん子供いたのか!?) びっくりしたのか声の主は思わず大声を出してしまったが周りに聞こえてはいけないためにグレンは胸を少し強めに殴った。 (あぁ、すまねえ。…それでお前がわざわざ一人の人間を助けるなんて随分優しいじゃねえか?) 「俺も一人の人間を助けるつもりなんてなかった。人間を助けたって得することはないからな。」 そう言うとグレンは手に持っていたパンを再びかじり始めるとそれ以上喋らなかった。 私は…二度も親友を失った… なんで?…なんでこんなことになるの? なんで不幸なことがこんな立て続けに起こるの?教えて?お父さんーー あれからミーナは学校でのショックが強すぎたため、帰ってきてからはずっと部屋にこもっていた。 母親が部屋越しから声をかけても返事をせず只々泣いていた。 昔撮ったお母さんとミーナそしてお父さんらしき人物が笑顔で手を繋いでいる写真を手に持って。 そして知らない間にミーナは泣き疲れて手に写真を持ったまま眠ってしまった。 気付いたらそこは真っ暗な空間に私はいた。 ここは、夢の中かな? けど何か不思議な感覚。 夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…これが夢なのかな? ミーナはよく分からないことをぶつぶつ言いながらその真っ暗な空間を歩いていく。 歩いて行くと真っ暗な空間から一人の男性が現れた。 その男性はグレンで黒いローブを着ていたが現実世界のグレンとは違い、黒髪で優しそうな顔をしていた。 「あなたは…グレンなの?」 朝に見たグレンとは全く異なる姿だったため戸惑いながら聞くミーナ。 そして目の前にいるグレンは優しそうに答えた。 「確かにここでも僕はグレンだ。君たちの言うところのね。」 「ここでも?君たちで言うところの?」 「うん。僕は本当の名前を悪魔に渡してしまったからね。全然覚えてないんだ」 「ちょっと待って!悪魔に名前を渡したってどういうこと?それにあなたはグレンなの?朝の時とは見た目も中身も全然違うし。」 グレンの言ってることを全然理解できないミーナ。 そんなミーナを見てグレンはクスッと笑う。 「確かにそうなるよね。分かった。順に追って話すよ。なぜ悪魔というものが存在する理由とかもね。」 「悪魔が存在する理由?」 「うん。10年前にね、僕は悲劇の国キュアリーハート出身なんだ。今は血の国レッドヘルになってるけどね。当時僕は兄と2人で過ごしてたんだ。あの悲劇の夜まではねーー」 夢の中のグレンは話した。 あの日の夜の赤い月と悲劇と残虐な悪魔の話。 グレンの話を聞く限りこの人は私なんかよりもずっとひどい目にあってるんだと。 自分なら耐えられるか…いや、まず精神を維持できないに決まってる。 「悪魔は本当に残酷だ。心を持たず、殺した人間を悪魔に変える魔法で繁殖し続け人間の不幸だけを望んで生きてる。」 「シェスカ達を悪魔に変えたあの人…あの人も元々は殺されて悪魔になってしまっただけの被害者なのかな?」 「多分そうだろう。最近殺された者は悪魔になっても知能は低い。だが10年前に殺された悪魔はシェスカ達よりもっと強いはずだ。…これを見てくれ。」 グレンはポケットの中から紙切れをミーナに渡した。 その紙切れには何かの魔法陣が書かれていて魔法が分からないミーナには読めなかった。 「それは僕が悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだ。これは君が持っていてくれ。」 「え、契約書だったら自分で持ってた方が…」 するとグレンの目には涙が流れていた。そして 「いや、君が持っていてくれ。今の僕…現実世界にいるグレンは悪魔との契約で心と名前を失いそして人格まで奪われた。頼む…君がグレンを…本当の僕を取り戻して欲しい。あいつは多分朝までこの町の裏山にいると思う。もう…時間だ…また今度夢で会おう。」 「ちょっと待っ…」 そこでミーナの意識は現実世界に戻った。 「ハッ!…夢…なのかな?とても不思議な場所にいた気が…そういえば…」 ミーナは夢の中でグレンから貰った紙切れを思い出し、ポケットの中を探してみた。 ポケットの中からは広げるとA4サイズくらいになる大きさで紙には魔法陣が書かれている。 確か悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだっけ? ーそうだ! 私は夢の中でグレンに頼まれたんだった。けど、どうすれば…私にはどうすることもできない… ミーナは起きてから少し考えると夢の中でグレンに言われたことを思い出し、出た答えが ーグレンと一緒に旅をする事。 けどそんな事お母さんが許してくれるかな? うちにはお父さんがいないから私まで出て行ったらお母さん一人ぼっちになる。 お父さん今どこにいるんだろう? 「ミーナ、起きてるの?起きてるなら朝ごはん食べなさーい!」 一階からミーナを起こすために母の大きな声が聞こえてきた。 「ちょっと待ってー!学校ないんだからもう少しだけ寝させてー!」 昨日グレンが学校を悪魔ごと燃やしたせいで止むを得ずミーナの学校は廃校となった。 生き残った生徒達や先生も他にいたが全員昨日の事件のショックでとても学校どころではなかった。 「何言ってんの!学校がなくても朝は早く起きてちゃんとご飯食べなさい!」 「はぁ~い…」 ミーナは寝起きの重たい体を立ち上がらせると目をこすりながら階段を降りた。 テーブルの上にはトーストの上に目玉焼きが乗ていてその匂いが食欲をそそり、ミーナはお腹をグーッと鳴らした。 その音が異様に大きかったため母は食べていたものを思わず吐き出しそうになった。 ミーナは顔を真っ赤にしそれをごまかすためにトーストを頬張ったがそれが余計面白いためお母さんは思わず吹いて笑ってしまった。 「オー!オハアハン(もう!お母さん!)」 「ごめんごめん。あまりにもミーナの顔が面白くてついね。さ、いつまでも頬張ってないで早く飲み込んでしまいなさい。」 そう言われてトーストを飲み込むと紅茶で流し込んだ。 母はいつもそうだった。 私が前の日に嫌な事があれば深刻な話より逆に私の気持ちを和ませて元気にしてくれるのだった。 どうしようもないときにそれをされるとすごくイライラしてしまうがそれでも私のためにやってくれてるんだって思うと嬉しい気持ちの方が強く、そんな母の事が好きです。 けど、私はそんな母に家を出るなんて言えない。 今まで散々お世話になったのにそんな勝手な事できるわけない。 そんな感情が頭の中で考えてしまう。 「ねぇ、ミーナ?」 「あ、はい!何?」 いきなり呼ばれてハッとするミーナ。 「あなた、何か隠してるね?」 「え?…急にどうしたの?」 「とぼけないで。知ってるのよ。今ミーナが何か悩んでるくらい顔見れば分かるのよ。」 顔を見たら分かるって…そんな私悩んでる顔してたかな? 仕方がない。言わないと…けど昨日のことはなるべく避けて言わないと。 「あのね、お母さん。私…旅に出たいの。」 怒られる…そう思ったが意外にも母は怒らずに落ち着いていていた。 「どうして?」 どうしてって言われてもなんて答えたらいいんだろう?グレンの事を言ったら絶対反対するし…悪魔の事を言ったら絶対反対するだろうし。 「…私ね、旅をしてこの国の外に出てみたいの。そしていろんな事をこの目で見て学びたい。だから…」 「…女の子1人でで旅するのなんて危ないからダメに決まってるでしょ!」 そう言って絶対怒るだろうなぁ。 そう思うとミーナは母の反応が怖くて体が自然と小刻みに震えていた。 しかし、母はそんな反応とは違う思いもしない返答を返した。 「ミーナ。あなたはやっぱりお父さんの子ね。」 「えっ?」 「行きなさい、ミーナ。旅をする事を許します。」 「ちょっ、ちょっと待って!そんなすんなり許してくれるの!?私女よ?普通反対するんじゃないのそこは?」 まさかすんなり許してくれるとは思わずミーナは驚き、母に尋ねた。 しかし、母はまた思いもよらない事を言った。 「確かにあなたは女の子よ。しかも朝はなかなか起きないし料理も洗濯も勉強もおまけに掃除もしないから部屋は散らかしっぱなしの散々手のかかった娘よ。」 そこまで私の事聞いてないのに…掃除は確かに苦手だけどさ… けどなんでだろ?それなら普通旅する事なんて反対するに決まってる。 「でもね、それは全部私のせいなのかもしれないわ。お母さんねあなたが心配で今まで必要以上に手をかけてたのかもしれない。でもそれじゃ肝心のあなたは成長するどころかいつまでたっても甘えてしまうわ。確かに旅は危険だわ。ましてあなたが旅をするなんて心配で本当はやめてほしい。」 「お母さん。」 「でも昔お父さん言ってたわ。旅をする事で見えないものが見えてくる。見た事ない景色、国、そして厳しい現実。それら全てを乗り越えて俺は成長できたんだと思うって。…だからね…あなたも旅をしてほしい。けど無理はしないで。ゆっくりでいいの。ゆっくりと旅して…私は成長したミーナをこの目で見る事を楽しみにしてます。」 「お母さん!」 私は母の言葉に思わず泣いてしまい、母に抱きついた。 そして思った。 絶対に成長してまた帰ってくると。 私は朝ごはんを食べてからすぐに旅の準備をするためにリュックの中に着替えや非常用の物を詰め込んだ。 すぐに旅に出てしまうのはちょっと急ぎすぎだと思うがそれだと間に合わない。 旅とはいえこれは夢の中のグレンとの約束だからグレンがこの町にいる間までに家を出なければならない。 母はというとそんな急ぎで旅に出るミーナに何も言わず、笑顔で玄関まで見送ってくれた。 「行ってくるね、お母さん。」 「風邪には気をつけるのよ。あとお金は余分にあるんだから食事はちゃんと取って体調管理にも気をつけるのよ。」 「うん、分かってる。」 「それと、あなたはいつも慌てん坊だから慣れない環境にいっても落ち着いて行動するのよ?」 「分かってるよー」 「それとあと…」 「もう!分かってるよ!じゃ、行ってくる!」 あまりにも長いので少し鬱陶しく思うミーナは最後の言葉を聞かずに母に背を向けて行ってしまった。 「…ミーナ。お父さんに会ったらよろしくね。そしてたくましくなって帰ってきてね。」 ミーナが見えなくなってから母は小さな声で最後の言葉を呟いた。 家を出てから数十分後、ミーナは元々学校が会った場所の近くの裏山に着いた。 山自体は大きくなかったのでミーナはそのまま山を登りすぐに頂上に着いた。 そこには昨日学校で悪魔になったシェスカ達を殺した黒いローブを身にまとった赤髪のグレンが待っていた。 グレンはミーナを確認すると相変わらず表情の変わらない冷たい目で見てきた。 夢で会ったグレンとはまるで別人のように見えた。 「やっと来たか。」 「えっ?来るの分かってたの?」 「あぁ、どうせ俺のもう一つの人格がお前を誘導したんだろう。あいつ、勝手にお前の方に移動しやがって…」 「あなたは夢の中のグレンを知ってるの?」 「知ってるとかじゃなくてあれは俺自身だからいわゆるもう一つの人格だ。ったく、まだ俺から主導権奪えると思いやがって…」 「え、主導権?」 「お前には関係ない。…もうそろそろこの町を出るぞ。」 すると急にグレンはフードを被り、空間に穴を開けた。 「こい、お前もどうせ俺についてくるんだろ?仕方ないから連れてってやる。」 「うん、よろしくね。」 ミーナはグレンが開けた空間の穴に近づき、その穴にグレンと一緒に吸い込まれた。 「くそ!逃げられたか!…どうしますか?」 グレン達が空間の穴を開けて吸い込まれて消えたすぐに何者かが息を切らしながら舌打ちをした。 そこには4、5人の騎士のような姿をしていてどうやらグレンを狙っているようだった。 するとその中にいる大柄なリーダーのような男が 「紅の悪魔祓い…今回も悪魔を殺したせいで罪のない市民の人々の命を…許さんぞ…この魔法騎士団 12騎士長(トゥエルブ・ナイツ)の私が必ず引っ捕えてやる!お前達!あの悪魔祓いが行くとこに先回りだ!」 「はっ!」 その男が命令すると他の騎士達と共に山を降りた。 穴に吸い込まれたミーナとグレンが出た場所はミーナ達の町である(クレーアタウン)よりも少し東の森だった。 その森は地面が見えないほど草がぼうぼうに生えていて周りは木がたくさんあって前が見えない状態だった。 「とりあえず巻いたな…行くぞ、女!」 「ちょっとまって。この靴じゃ歩きにくいからもう少しゆっくり歩いてー。」 ミーナのブーツは底が少し厚いため、歩くのには少し不向きだった。 しかし、グレンは相変わらずの愛想のない表情で 「さっさと歩け。置いてかれたくなかったらな。」 そういって歩く速さを変えないグレン。 ミーナは頑張ってその速さについていこうと必死に歩いた。 「グレンー。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ?」 「なんだ?」 「グレンの名前ってさ、昔悪魔と取引して無くしたんでしょ?」 「そうだ。それがどうした?」 「昨日グレン言ってなかった?グレンって周りが勝手につけたものだって。なんでグレンなの?」 確かに昨日グレンは本名を名乗らなかった。それは昔悪魔と取引したために名前を奪われたからである。 「…お前には関係ない。俺は名前なんてどうでもいいし周りがそう呼びたいなら勝手にすればいいと思ってる。」 「ふぅーん。」 グレンの冷たい対応にも少し慣れたのかミーナはサラッと聞き流した。 「…ちっ!また追ってか…もう一回空間移動するぞ!」 「え?追ってって何…て、わわわわ!」 グレンに無理やり押されてミーナは空間の穴に勢いよく吸い込まれ2人はその場から消えた。 グレンが移動したところはいつも中途半端なところだった。 どこかというと。 「何もないとこから人出てきたぞー!」 「魔法使いだ!初めて見た!」 「けどなんでこんなところに?」 そこはさっきの森を抜けると着く場所である町であったがグレンが変なところにワープしたため町の人達に余計な注目を浴びることになった。 ミーナは周囲に見られてると思うと恥ずかしさで頭がいっぱいになり挙動不審な動きをしている。 「グ、グレン…みんなに見られてるよ~…。な、なんでこんなとこに移動するのよ…」 一方グレンはこんな場面になったのにも関わらず一言。 「あ、ヤベ…間違えた。」 「無表情で間違えないでー!もう、どうするのよ!」 グレンのせいで更に人が増えてどんどん恥ずかしさが大きくなる。 「仕方ない、急いでたからな。…仕方ないからお前担いで逃げるか。」 「担ぐって…って、うわぁ!」 グレンはミーナを片手で持ち上げると脇腹に抱えて走った。 周りの人はいきなり走ってきたグレンにびっくりして道を開けた。 その時周囲の人たちは全員頭の中でこう思っただろう。 (…一体、なんだったんだろう?) 状況があまり分かってない町の人たちは唖然としていたがしばらくするとそんな事すぐ忘れて皆それぞれ自分の持ち場に移動した。 「ちょっとぉ!下ろしてよー!」 いつまでも担がれたままでは通りすがりの人からおかしな目で見られてしまうので下ろしてと頼むミーナ。 「ダメだ…追っ手が来てる。お前を下ろしたらすぐ追いついてしまう。」 「ねえ、さっきから言ってる追っ手って何?」 「っち…いつの間にここまで…もっかい移動するぞ。」 グレンはそのまま走ると目の前に空間の穴が開き、走りながらそのまま通過した。 移動した場所は最悪だった。 場所はこの町の建物の裏側で人気のない所だがそこには10人以上の騎士達と如何にも強そうな大柄なリーダーらしき人物がまるでここに移動することを予知していたかのように待ち構えていた。 「よく来たな、紅の悪魔祓い…グレン。」 大柄の男は左の腰に収納されている剣を抜くと両手で強く握りしめ構えた。 「ちっ!やっぱり騎士団か。」 「そうだ。俺は大国イフリークの魔法騎士団であるエバルフ・シュロン。貴様をずっと追いかけてきた者だ。大人しく捕まるがいい、人殺し!」 そう言うと10人の部下は一斉に剣を抜き、エバルフ同様剣を握りしめ、構えた。 グレンがずっと空間移動で逃げていたのはこの者達がグレンを狙っていることに気づいてたからである。 しかし疑問に思ったのはなぜ空間移動を使っているのにすぐ追いつくことが出来たのか。 「なんで追いついたか、そんな顔をしてるから教えてやろう。それは俺の部下の1人に未来を予知する魔導師がいるからだ。」 「予知だと?」 「ああ、そうだ。今までお前は近くに俺たちが近づくと空間移動でその場から一瞬で転移してにげる。…が、移動する場所は行き当たりばったりで回数と魔力にも限界がある。俺たちはそれを予知してこの場所に待機する事にした。そして…」 「転移なしのお前に勝ち目はない!」 エバルフはそのまま剣を振りかぶり、グレンに斬りかかろうとした。 しかし、グレンは一瞬で空間から大剣を出すとエバルフの剣を受けながした。 「…確かに俺はよく転移を使って悪魔と戦っていた。だが、お前は転移の事だけ囚われすぎて他のことは推測出来なかったみたいだな?…教えてやる。」 「俺は全ての属性を最上級で使う事ができるって事だ!」 この世の魔法は属性と魔力が備わっていないと魔法を使うことは出来ない。 魔法の源である魔力は人それぞれ質が違い、ランクで表すと 神級 最上級 中級 初級 と段階があり、大概の強い魔導師は最上級魔法を使う。 中級や初級に比べると広範囲に及ぶ魔法と圧倒的な力を駆使出来るがその分魔力の消費が激しく使いすぎると自分の身を滅ぼす事になる。 だから大抵の人は魔力の消費を抑えるために初級魔法や中級魔法を使って消費を抑えている。 次に属性は数十種類あり基本は人間1人につき1属性であり、複数持つ者もいるが使う魔力は1属性者に比べると2倍も魔力を消費する。 魔力の少ない者は二属性以上は使う事が出来ないので結果的に魔法を使う事が出来ない。 しかし、グレンはその摂理を無視し全ての属性とそれを全てにおいて最上級の魔法を使う事が可能なのである。 「ぜ、全属性だと…?ふざけるな、そんな人間いる者か!しかもその属性全てを、最上級魔法なんてまず魔力量から考えたとしても不可能に決まってる!ハッタリだ!」 グレンの言ったことを信じようとしないエバルフ。 多分エバルフでなくても他の者でも同じような反応をすると思う。 「ミーナ、ちょっと離れてろよ。」 「う、うん」 側にいたミーナは巻き添えを食わないためにグレンの後方に移動した。 グレンはミーナに安全な位置に離れているかどうか確認すると再び大剣を持ち。 「ハッタリかどうかは見てからにしろ。」 グレンは大剣を握りしめるとバチバチと剣全体が雷を帯びる。 その雷を帯びた剣を縦に振ると剣から雷の斬撃が発生し、地面をも切り裂くほどの威力でエバルフを襲う。 その斬撃をエバルフは剣で受け止め、受け止める際に防御魔法の様な者を剣に纏い雷をかき消した。 しかし、その威力は最上級魔法の一つなのでそれを止める魔力は相当なものだった。 「なんだ、あの威力は…」 「ほんの軽いウォーミングアップだ。今度は風の最上級だ。」 そう言うとグレンの全身から緩やかな竜巻が発生すると今度は身体能力が上昇し、目に見えない速さでその場から消えた。 「き、消えた…どこにいっ…」 消えた際に突風がエバルフを突き抜けた。 「ぐわぁっ!」 突き抜けた突風によって後ろにいる部下の1人が短い悲鳴を上げ、胸から血を吹き出しながら倒れた。 「な…何が起こっ…」 すると突風が止むと今度は部下全員を包み込むほどの竜巻が起こり、その勢いで発生したかまいたちの様なものが部下を切り刻んだ。 「お前たちーー!!」 竜巻は一瞬で部下を切り刻むとすぐおさまった。 すぐおさまったが斬られた部下たちはその場に倒れ込み、斬られても意識を保っていた者もいたが戦える状態ではなかった。 エバルフは斬られた部下たちを見て驚愕した。 まさかこれほどまで差があるとは… 「次はお前だな。」 するとエバルフの背後にはグレンが移動していた。 背後に取られたのを感じるとエバルフは咄嗟に距離を取って剣を構えた。 グレンはエバルフが離れると舌打ちをして言った。 「1人だけ、俺の竜巻をまるで予測したかの様に避けた奴がいた。」 「それは多分俺の部下のロフィスだ。あいつはこの中では俺の次に強い優秀な騎士だからな。」 「お前の次?今の竜巻はお前じゃ避けることが出来ないのにお前の次に強いのか?」 「何だと!?」 侮辱されたエバルフ。更に剣を握りしめ、剣先がプルプル震えていた。 「…まあいい。後で倒すだけだ。あぁ、安心しろ。今倒れた奴らは全員死んではいない。さあ、遠慮せずにかかってこい。」 挑発する様に少し口元を緩ませながら誘ってくるグレン。 その舐めた態度にイラっとしたエバルフは調子に乗るな!と言って剣を握りしめるとそこから竜巻が発生した。 「ならばこの俺も本気を出してやろう。疾風の12騎士長の力、思い知れ!」 エバルフは先ほどまでグレンが使っていた風の最上級魔法で一瞬で移動して見えなくなった。 エバルフはそのままグレンの背後に移動しそのまま剣を振り下ろす。 カキィィン! 「なっ!?…斬れない!?」 剣が当たっているのに斬られないどころか傷一つ付かないグレン。 「鋼属性の身体硬化魔法だ。こんなのは訓練次第で誰でもできる簡単な魔法だ。そんな剣じゃ斬れねーよ。」 グレンは斬りつけた状態のままのエバルフに抵抗することなく余裕があるのか魔法の説明までした。 するとグレンの体は液体みたいに変化し、その場に半径2メートルくらいの水たまりができた。 「何の真似だ!真面目に戦え!」 水たまりになったグレンを攻撃できないエバルフ。水たまりのところを踏み入れたその瞬間。 ズバババババーー!!! いきなり水たまりから出てきた水の槍が飛んできてエバルフは咄嗟の出来事に判断できずそれをまともに食らってしまった。 (なっ…何っ!?…) 「水の造形魔法だ。自分の体を液体、固体、気体に変化させることが出来る。」 そう言うと水たまりは浮き上がり出して次第にグレンの形に変わっていく。 水の槍によってダメージを負ったエバルフは立ってるのがやっとだった。 そしてこう思った。 ー殺される…このままじゃ殺される… そう思うとエバルフは体に力が入らなくなり、恐怖で震えてしまう。 「なんだ、怖気づいたか?まあ普通これだけ差を見せつけられればそうなるだろ。」 エバルフはグレンの強さに怯えてそのまま体が地面に崩れ落ちる。 (くそっ…情けない。何が12騎士長だ。何が市民のためにだ!目の前の敵に怖気づく奴がどの口で言ってるんだ…) もはやエバルフの頭には敗北の色で染まっていた。 ーもう何をやっても無駄だ。すみません、団長… 助けてー! エバルフの頭の中で突然女の子の声が聞こえた。 この声は…死んだ私の妹… するとエバルフの頭の中で昔の記憶が蘇った。 3年前、私の妹は黒いローブの男に悪魔もろとも殺された。 ー3年前 「お兄ちゃん、魔法騎士団ってどんな仕事なの?」 これはまだ俺が魔法騎士団に入ったばかりの新人だった頃、提出しなければならない書類を書いてると妹が勝手に自分の部屋に入ってきた。 妹はまだ7歳になったばかりで短いスカートをはいた年相応の子供っぽさがあった。 「こら、勝手に入ってきたらダメだろ?」 「ごめんなさい、お兄ちゃん。でも私、お兄ちゃんの仕事が気になって…」 エバルフ落ち込む妹を見て、書類の書く手を止めると妹の方を向いて。 「魔法騎士団はな、簡単に言えばヒーローなんだ。」 「ヒーロー?」 「そう。つまりこの国や家族、全ての人を守ることが俺の仕事なんだ。お兄ちゃんはそんなカッコいい人達に憧れてこの仕事を選んだんだよ。」 「ヒーロー!騎士団カッコいぃ!」 俺の言ったことに感動した妹は目をキラキラさせた。 昔の俺はどこか綺麗事のような事を言ってるが当時の私はこれぐらい純粋な夢があったのだ。 そう、この純粋な心をあの日潰されたんだ。南地区黒いヒビ割れの悪魔が言った通り、この地区にも悪魔がいた。その中でも黒いスーツを着たスマートな体型の悪魔は騎士団の攻撃を喰らっても倒れることはなく、街を容赦なく破壊していく。「くそっ!もっと魔砲弾を撃てー!」「だめです!もう弾が残り少ない!」「くそっ!こんな時に12騎士長の1から9長は他の国に出張とは…エバルフとカレンはまだ戻ってこないのか!?」「それが…未だに連絡が取れません!」「くそっ!仕方がない!俺がやってやる!」先陣を切って前に出たのはエバルフとカレンと同じ称号を持つ男。11騎士長(イレブン・ナイツ)サージス・デルモンテ見た目は黒髪に白髪が生えかかった40手前の男だが体力が自慢の筋肉質な男だ。「11騎士長!1人で大丈夫でしょうか!?」「お前らが出てきたら邪魔だ!砲撃手以外の騎士は周りの雑魚共をやれ!俺はあの黒スーツの悪魔をやる!」サージスは他の騎士達に指示を与え、自分は黒スーツの悪魔の悪魔の方へと行った。「1人でいいとは随分余裕だな。」「ふんっ!俺は何年も騎士団やってきた男だ!お前みたいな貧弱な悪魔一捻りにしてくれるわ!」サージスは手から自分の武器である1m?程ある巨大なサーベルを出した。「まあいい。俺はこの国を潰す事が目的だが暇つぶしついでにお前と遊んでやるよ。」「遊んでられる余裕があればなっ!」サージスはサーベルを縦に振るとその威力で地面が割れた。悪魔はそれをジャンプでかわし、空中に浮いた状態でその威力を見た。「なるほど、身体能力を上げる魔法か。確かに人間にしては筋力だけはある様だな。」悪魔は浮いた状態から一気に急降下し、サージスの胸に向かって鋭い槍状の魔力の塊を投げつけた。「筋力だけと思うな悪魔め!」そう言ってサージスは地面を蹴ると、その勢いで空を飛び上がった。飛んでる最中に魔力の槍をサーベルではじいて避け、そのままの勢いで悪魔を斬りつけようとする。しかし、黒スーツの男は浮いた状態で体を回旋させながらサーベルをかわす。「ちっ!すばしっこい悪魔め!」避けられたのが悔しいのかサージスは舌打ちをすると魔法でフワフワと落ちて地面に戻る。「なるほど。とんでもない筋肉だな、地面を蹴るだけで空を飛べるとは。しかもそれとは別に魔法で体を軽くしてるんだな。」「そうだ!だが、俺の実力はまだまだこんなもんじ
宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。笑いながらミーナに声をかけた。「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」「私?私は……」「おーい、カレーン!」カレンが答えようとした時、2人の後ろの方からカレンを呼ぶ声が聞こえてきた。誰だろうと振り返ると手を振りながらやってくるのは男の人だった。一瞬彼氏かなと思うミーナだが数秒後その人が誰なのか一瞬で分かった。その人とは。「え、エバルフさん!?」この人はこの前までグレンを殺そうとしていた騎士団の1人のエバルフさんだった。向こうもミーナとカレンが一緒にいる事に驚いていた。「君は、紅の悪魔祓いと一緒にいたお嬢ちゃんじゃないか!?なぜカレンと?」「あら、あなた達2人とも知り合いだったの?」「ああ。この子はこの前団長に報告した悪魔祓いと一緒に旅してる子だ。…この子がいるって事はまさかこの国に紅の悪魔祓いがいるのか?」ミーナを見てグレンの事を思い出したエバルフ。焦っているのか額から汗が流れ落ちていた。それに気づいたミーナはエバルフを気遣うように返した。「大丈夫ですよ。この国に来てからグレンと私は別々に行動してるますから。」「ホッ……そうかそうか。じゃああいつは今いないんだね?」一瞬だけ安心したため息を吐くエバルフを見てカレンは笑いながら馬鹿にするように。「あはははっ!何ビビってるのよ。ほんっとに情けないわねぇ。」「うっ、うるさい!お前はあの化け物を見てないからそう言えるんだ!」「あんたと一緒にしないで欲しいわね。どんな敵がいても私は負けずに挑むわ。あんたと違ってね!」「何だとー!」2人が言い争ってるとそこに割り込むようにミーナが口を出した。「あのー。カレンさんの仕事ってもしかして…魔法騎士団の騎士ですか?」「ええ、そうよ。ちなみに私は10騎士長でこの人(エバルフ)よりも上の位よ。」指を差しながらエバルフを見
あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。 この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。 魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。 グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。 「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」 「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」 ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。 「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」 グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。 「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」 係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。 「あーー!!!」 するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。 「ど、どうした!?」 「見つかった…」 「え?」 「良かった~!パスポート見つかって。」 どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。 グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。 「(ややこしいからやめろって。)」 2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。 その通りには普通の町では買えない木の
今からおよそ10年前、ある国の悲劇によって世界中を恐怖させた。 その国は、赤い地獄ーレッドヘル。 昔は世界で一番平和で活気のある国だったが10年前の事件によって人はこの国に立ち入る事を禁止された。 そう、人はいない。 昔の事件の影響によって太陽は隠れこの国は年中黒い雲に覆われ冷たい風が街を吹き抜ける。 レッドヘルの中心部には一つだけ壊れていない小さめの建造物があり、その建造物はこの国の地下に繋がっている。 その地下には世間には知られていない場所があった。 地下の悪魔の住処ー通称(悪魔界) そこにはたくさんの悪魔が生存していて地下には建物や店が出回っていた。 そこにも人間と同じようにトップの悪魔が存在しその者達が集う場所があった。 その部屋には10人程度の悪魔達が椅子に座っていてそのうちの1人の男が言った。 「おい、聞いたかよ?あのロフィスがやられたらしいぞ?」 その男は逆立った黒髪に目がつり上がっている悪魔だった。 その発言に今度は手足の細いスタイリッシュな体型に金の長髪にウェーブが掛かった大人女性が返答した。 「らしいわね。あの予知能力は私達にはない存在だったから結構便利だっだのに…残念だわ。」 その女性はロフィスではなく、ロフィスの能力にしか興味がないようだった。 「なに呑気な事言ってやがんだ。ロフィスが殺られたって事はよぉ、あの悪魔祓いとか言う人間に負けたってことだろーが!」 逆立った髪の男が金髪の女性を睨みつけ怒鳴った。 それに対して女性はクスッと笑い。 「全く、まだまだ可愛い"憤怒"ね。まるで怒鳴るのがカッコ良いと思ってるような学生の反抗期のようね。」 「うっせーな"色欲"のくそババァ。てめえみてえなバカ女は男のケツでも追っかけてろ!」 憤怒と言われた男は凄みを利かしながら言った。 すると女性から笑顔は消え、無表情の顔になった。 ガタァンッ!! 「……は?あんた喧嘩売ってんの?」 椅子から立ち上がると黒いオーラが体の周りから発生し、それを見て憤怒の男が下品に笑いながら挑発する。 「ハッ!やるなら掛かって来いよ!このブスが!」 「このガキ……一回死ななきゃ分かんないのかな…?」 2人が攻撃態勢に入ろうとしたその時。 バァァァン!!! 机を思
「…ふわぁーーー…今日はなんだか疲れたなー。」 眠さで大きなあくびをするミーナ。 ロフィスの一件の後、グレンとミーナは町の外れにある綺麗な水辺の近くに寝泊まりすることにした。 「けどグレンの空間能力はすごいね。なんでも収納可能じゃん。」 テントや寝泊まりするために必要な道具はグレンの空間能力のポケットから引き出した。 「…そういや、エバルフさんが言ってた事ってほんとかな?」 ミーナはエバルフ達と別れる際に、エバルフからこんな事を聞いた。 昼間 ロフィスを倒した後、エバルフ達はグレン達の方に向かって一列に整列した。 「今回の件に関しては、紅の悪魔祓いの協力で獄魔の討伐に見事成功した。感謝する。それと、お嬢ちゃん。…ありがとう、君のおかげで騎士団の誇りを思い出せた。」 「全隊、礼!!」 そしてエバルフの号令でエバルフと部下達は全員揃って頭を下げた。 「俺を捕まえなくていいのか?ずっと狙ってたんだろ?」 「まさか、今日俺たちの命を守ってくれた恩人を捕まえるわけないだろう。…では、俺は今日の事を騎士団の団長に報告しなければならんからここで失礼する。」 エバルフ達は去ろうとしたがエバルフは最後に振り返ってからこう言った。 「一応言うが団長には気をつけろよ。あの方はお前みたいな強い奴と戦うのが好きだから会えば必ず戦いになる。そうなったら流石のお前も命はないぞ。」 それを最後に言い残し、部下を引き連れて去っていった。 「………命はないぞ…っていう事はグレンより強いのかな?」 悪魔を余裕で倒すグレンに勝つかもしれない人なんて相当強いに決まってる。 「だとしたらグレンとその団長は近づけてはいけないわ。…そういえばグレンは裏で何してるんだろ?」 ミーナはその事を伝えるためにテントの裏に顔を出してみた。 そこには何やら坐禅を組みながら目を瞑り、魔法書のような物を開いていた。 その周りを囲む様に黒い魔法陣が地面に展開され、そこでひたすら呪文のような物をブツブツと唱えていた。 ミーナはよく聞き取れないので気づかれないようにそーっと近づいて聞いた。 「(何だろう…?こんなに近くで聞いてるのに何言ってるのかさっぱり…)」 ミーナはここで邪魔するのもグレンに悪いと思ったのか終わるまでそばで待つ事にし
「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」 「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年かけたこの計画を無駄にしやがったな…許さん…許さんぞぉぉぉ!人間どもぉぉぉ!!!」 ロフィスの声の大きさに全員再び戦闘体制に入ろうとした時。 「…!?…ガァッ!…」 ロフィスの指先から出た一筋の光線がエバルフの胸を貫き、エバルフの体は地面に倒れこんだ。 「エバルフさん!おい、ロフィス!いい加減にしろてめぇ!」 「いい加減にしろだと?こっちのセリフだクソ人間…。3年だぞ…こいつを悪魔化させんのにどれだけ苦労したか…許さんぞ。お前ら全員皆殺しにしてやるよ!」 ロフィスの腕と顔が変形し始めた。 黒い体は普通の悪魔と同じだがロフィスの変異は普通の悪魔と違い人間の面影を残したまま腕と顔が黒く変異し、髪は茶髪のままだった。 「あの人も悪魔の姿に…」 「落ち着けミーナ。危険だから後ろにいてろ。」 その姿があの時のシェスカと重なって見えたのかミーナは怯えていたがグレンに言われてエバルフの部下達の所に移動した。 そしてグレンはロフィスの方に再び顔を向け。 「…とうとう本性を表したな…」 「殺してやるよ…この姿にさせた事、後悔するがいい!」 まず最初に動いたのはロフィスだった。 ロフィスの怒りは極限状態なのが周りにも伝わってきて戦ってもいない部下達の何人かは反射的に一歩下がった。 ロフィスの拳がグレンの顔面を狙ってくるとグレンは大剣の剣脊でそれを受け止めた。 キィィィン!!! 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。 「(こいつの拳は金属類に匹敵するのか!?大剣でガードしたのにビクともしねぇ!)」 しかしロフィスはグレンに考え







