로그인あの後グレンは一人で帰れそうにないミーナを家まで送り届け、今はこの町のはずれにある裏山みたいなところでパンをかじっていた。
(人の血を見た後によく飯が食えるな。) すると周りには誰もいないはずなのにどこからか声がした。 「…お前に言われたくない。」 誰もいない空間に対し返事をするグレン。端から見ると独り言を喋ってるかのようだった。 (ハハハ!それは違いねえな!てか昨日もそうだったがあの女、ミーナだったか?お前にしちゃ珍しく一人の女をやけに守ってたようだが何かあんのか?) 「…いや、別にない。ただあの女は俺に剣術を教えてくれた俺の師匠の娘だからだ。」 (あー、あのおっさんか…って、あのおっさん子供いたのか!?) びっくりしたのか声の主は思わず大声を出してしまったが周りに聞こえてはいけないためにグレンは胸を少し強めに殴った。 (あぁ、すまねえ。…それでお前がわざわざ一人の人間を助けるなんて随分優しいじゃねえか?) 「俺も一人の人間を助けるつもりなんてなかった。人間を助けたって得することはないからな。」 そう言うとグレンは手に持っていたパンを再びかじり始めるとそれ以上喋らなかった。 私は…二度も親友を失った… なんで?…なんでこんなことになるの? なんで不幸なことがこんな立て続けに起こるの?教えて?お父さんーー あれからミーナは学校でのショックが強すぎたため、帰ってきてからはずっと部屋にこもっていた。 母親が部屋越しから声をかけても返事をせず只々泣いていた。 昔撮ったお母さんとミーナそしてお父さんらしき人物が笑顔で手を繋いでいる写真を手に持って。 そして知らない間にミーナは泣き疲れて手に写真を持ったまま眠ってしまった。 気付いたらそこは真っ暗な空間に私はいた。 ここは、夢の中かな? けど何か不思議な感覚。 夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…これが夢なのかな? ミーナはよく分からないことをぶつぶつ言いながらその真っ暗な空間を歩いていく。 歩いて行くと真っ暗な空間から一人の男性が現れた。 その男性はグレンで黒いローブを着ていたが現実世界のグレンとは違い、黒髪で優しそうな顔をしていた。 「あなたは…グレンなの?」 朝に見たグレンとは全く異なる姿だったため戸惑いながら聞くミーナ。 そして目の前にいるグレンは優しそうに答えた。 「確かにここでも僕はグレンだ。君たちの言うところのね。」 「ここでも?君たちで言うところの?」 「うん。僕は本当の名前を悪魔に渡してしまったからね。全然覚えてないんだ」 「ちょっと待って!悪魔に名前を渡したってどういうこと?それにあなたはグレンなの?朝の時とは見た目も中身も全然違うし。」 グレンの言ってることを全然理解できないミーナ。 そんなミーナを見てグレンはクスッと笑う。 「確かにそうなるよね。分かった。順に追って話すよ。なぜ悪魔というものが存在する理由とかもね。」 「悪魔が存在する理由?」 「うん。10年前にね、僕は悲劇の国キュアリーハート出身なんだ。今は血の国レッドヘルになってるけどね。当時僕は兄と2人で過ごしてたんだ。あの悲劇の夜まではねーー」 夢の中のグレンは話した。 あの日の夜の赤い月と悲劇と残虐な悪魔の話。 グレンの話を聞く限りこの人は私なんかよりもずっとひどい目にあってるんだと。 自分なら耐えられるか…いや、まず精神を維持できないに決まってる。 「悪魔は本当に残酷だ。心を持たず、殺した人間を悪魔に変える魔法で繁殖し続け人間の不幸だけを望んで生きてる。」 「シェスカ達を悪魔に変えたあの人…あの人も元々は殺されて悪魔になってしまっただけの被害者なのかな?」 「多分そうだろう。最近殺された者は悪魔になっても知能は低い。だが10年前に殺された悪魔はシェスカ達よりもっと強いはずだ。…これを見てくれ。」 グレンはポケットの中から紙切れをミーナに渡した。 その紙切れには何かの魔法陣が書かれていて魔法が分からないミーナには読めなかった。 「それは僕が悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだ。これは君が持っていてくれ。」 「え、契約書だったら自分で持ってた方が…」 するとグレンの目には涙が流れていた。そして 「いや、君が持っていてくれ。今の僕…現実世界にいるグレンは悪魔との契約で心と名前を失いそして人格まで奪われた。頼む…君がグレンを…本当の僕を取り戻して欲しい。あいつは多分朝までこの町の裏山にいると思う。もう…時間だ…また今度夢で会おう。」 「ちょっと待っ…」 そこでミーナの意識は現実世界に戻った。 「ハッ!…夢…なのかな?とても不思議な場所にいた気が…そういえば…」 ミーナは夢の中でグレンから貰った紙切れを思い出し、ポケットの中を探してみた。 ポケットの中からは広げるとA4サイズくらいになる大きさで紙には魔法陣が書かれている。 確か悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだっけ? ーそうだ! 私は夢の中でグレンに頼まれたんだった。けど、どうすれば…私にはどうすることもできない… ミーナは起きてから少し考えると夢の中でグレンに言われたことを思い出し、出た答えが ーグレンと一緒に旅をする事。 けどそんな事お母さんが許してくれるかな? うちにはお父さんがいないから私まで出て行ったらお母さん一人ぼっちになる。 お父さん今どこにいるんだろう? 「ミーナ、起きてるの?起きてるなら朝ごはん食べなさーい!」 一階からミーナを起こすために母の大きな声が聞こえてきた。 「ちょっと待ってー!学校ないんだからもう少しだけ寝させてー!」 昨日グレンが学校を悪魔ごと燃やしたせいで止むを得ずミーナの学校は廃校となった。 生き残った生徒達や先生も他にいたが全員昨日の事件のショックでとても学校どころではなかった。 「何言ってんの!学校がなくても朝は早く起きてちゃんとご飯食べなさい!」 「はぁ~い…」 ミーナは寝起きの重たい体を立ち上がらせると目をこすりながら階段を降りた。 テーブルの上にはトーストの上に目玉焼きが乗ていてその匂いが食欲をそそり、ミーナはお腹をグーッと鳴らした。 その音が異様に大きかったため母は食べていたものを思わず吐き出しそうになった。 ミーナは顔を真っ赤にしそれをごまかすためにトーストを頬張ったがそれが余計面白いためお母さんは思わず吹いて笑ってしまった。 「オー!オハアハン(もう!お母さん!)」 「ごめんごめん。あまりにもミーナの顔が面白くてついね。さ、いつまでも頬張ってないで早く飲み込んでしまいなさい。」 そう言われてトーストを飲み込むと紅茶で流し込んだ。 母はいつもそうだった。 私が前の日に嫌な事があれば深刻な話より逆に私の気持ちを和ませて元気にしてくれるのだった。 どうしようもないときにそれをされるとすごくイライラしてしまうがそれでも私のためにやってくれてるんだって思うと嬉しい気持ちの方が強く、そんな母の事が好きです。 けど、私はそんな母に家を出るなんて言えない。 今まで散々お世話になったのにそんな勝手な事できるわけない。 そんな感情が頭の中で考えてしまう。 「ねぇ、ミーナ?」 「あ、はい!何?」 いきなり呼ばれてハッとするミーナ。 「あなた、何か隠してるね?」 「え?…急にどうしたの?」 「とぼけないで。知ってるのよ。今ミーナが何か悩んでるくらい顔見れば分かるのよ。」 顔を見たら分かるって…そんな私悩んでる顔してたかな? 仕方がない。言わないと…けど昨日のことはなるべく避けて言わないと。 「あのね、お母さん。私…旅に出たいの。」 怒られる…そう思ったが意外にも母は怒らずに落ち着いていていた。 「どうして?」 どうしてって言われてもなんて答えたらいいんだろう?グレンの事を言ったら絶対反対するし…悪魔の事を言ったら絶対反対するだろうし。 「…私ね、旅をしてこの国の外に出てみたいの。そしていろんな事をこの目で見て学びたい。だから…」 「…女の子1人でで旅するのなんて危ないからダメに決まってるでしょ!」 そう言って絶対怒るだろうなぁ。 そう思うとミーナは母の反応が怖くて体が自然と小刻みに震えていた。 しかし、母はそんな反応とは違う思いもしない返答を返した。 「ミーナ。あなたはやっぱりお父さんの子ね。」 「えっ?」 「行きなさい、ミーナ。旅をする事を許します。」 「ちょっ、ちょっと待って!そんなすんなり許してくれるの!?私女よ?普通反対するんじゃないのそこは?」 まさかすんなり許してくれるとは思わずミーナは驚き、母に尋ねた。 しかし、母はまた思いもよらない事を言った。 「確かにあなたは女の子よ。しかも朝はなかなか起きないし料理も洗濯も勉強もおまけに掃除もしないから部屋は散らかしっぱなしの散々手のかかった娘よ。」 そこまで私の事聞いてないのに…掃除は確かに苦手だけどさ… けどなんでだろ?それなら普通旅する事なんて反対するに決まってる。 「でもね、それは全部私のせいなのかもしれないわ。お母さんねあなたが心配で今まで必要以上に手をかけてたのかもしれない。でもそれじゃ肝心のあなたは成長するどころかいつまでたっても甘えてしまうわ。確かに旅は危険だわ。ましてあなたが旅をするなんて心配で本当はやめてほしい。」 「お母さん。」 「でも昔お父さん言ってたわ。旅をする事で見えないものが見えてくる。見た事ない景色、国、そして厳しい現実。それら全てを乗り越えて俺は成長できたんだと思うって。…だからね…あなたも旅をしてほしい。けど無理はしないで。ゆっくりでいいの。ゆっくりと旅して…私は成長したミーナをこの目で見る事を楽しみにしてます。」 「お母さん!」 私は母の言葉に思わず泣いてしまい、母に抱きついた。 そして思った。 絶対に成長してまた帰ってくると。 私は朝ごはんを食べてからすぐに旅の準備をするためにリュックの中に着替えや非常用の物を詰め込んだ。 すぐに旅に出てしまうのはちょっと急ぎすぎだと思うがそれだと間に合わない。 旅とはいえこれは夢の中のグレンとの約束だからグレンがこの町にいる間までに家を出なければならない。 母はというとそんな急ぎで旅に出るミーナに何も言わず、笑顔で玄関まで見送ってくれた。 「行ってくるね、お母さん。」 「風邪には気をつけるのよ。あとお金は余分にあるんだから食事はちゃんと取って体調管理にも気をつけるのよ。」 「うん、分かってる。」 「それと、あなたはいつも慌てん坊だから慣れない環境にいっても落ち着いて行動するのよ?」 「分かってるよー」 「それとあと…」 「もう!分かってるよ!じゃ、行ってくる!」 あまりにも長いので少し鬱陶しく思うミーナは最後の言葉を聞かずに母に背を向けて行ってしまった。 「…ミーナ。お父さんに会ったらよろしくね。そしてたくましくなって帰ってきてね。」 ミーナが見えなくなってから母は小さな声で最後の言葉を呟いた。 家を出てから数十分後、ミーナは元々学校が会った場所の近くの裏山に着いた。 山自体は大きくなかったのでミーナはそのまま山を登りすぐに頂上に着いた。 そこには昨日学校で悪魔になったシェスカ達を殺した黒いローブを身にまとった赤髪のグレンが待っていた。 グレンはミーナを確認すると相変わらず表情の変わらない冷たい目で見てきた。 夢で会ったグレンとはまるで別人のように見えた。 「やっと来たか。」 「えっ?来るの分かってたの?」 「あぁ、どうせ俺のもう一つの人格がお前を誘導したんだろう。あいつ、勝手にお前の方に移動しやがって…」 「あなたは夢の中のグレンを知ってるの?」 「知ってるとかじゃなくてあれは俺自身だからいわゆるもう一つの人格だ。ったく、まだ俺から主導権奪えると思いやがって…」 「え、主導権?」 「お前には関係ない。…もうそろそろこの町を出るぞ。」 すると急にグレンはフードを被り、空間に穴を開けた。 「こい、お前もどうせ俺についてくるんだろ?仕方ないから連れてってやる。」 「うん、よろしくね。」 ミーナはグレンが開けた空間の穴に近づき、その穴にグレンと一緒に吸い込まれた。 「くそ!逃げられたか!…どうしますか?」 グレン達が空間の穴を開けて吸い込まれて消えたすぐに何者かが息を切らしながら舌打ちをした。 そこには4、5人の騎士のような姿をしていてどうやらグレンを狙っているようだった。 するとその中にいる大柄なリーダーのような男が 「紅の悪魔祓い…今回も悪魔を殺したせいで罪のない市民の人々の命を…許さんぞ…この魔法騎士団 12騎士長(トゥエルブ・ナイツ)の私が必ず引っ捕えてやる!お前達!あの悪魔祓いが行くとこに先回りだ!」 「はっ!」 その男が命令すると他の騎士達と共に山を降りた。 穴に吸い込まれたミーナとグレンが出た場所はミーナ達の町である(クレーアタウン)よりも少し東の森だった。 その森は地面が見えないほど草がぼうぼうに生えていて周りは木がたくさんあって前が見えない状態だった。 「とりあえず巻いたな…行くぞ、女!」 「ちょっとまって。この靴じゃ歩きにくいからもう少しゆっくり歩いてー。」 ミーナのブーツは底が少し厚いため、歩くのには少し不向きだった。 しかし、グレンは相変わらずの愛想のない表情で 「さっさと歩け。置いてかれたくなかったらな。」 そういって歩く速さを変えないグレン。 ミーナは頑張ってその速さについていこうと必死に歩いた。 「グレンー。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ?」 「なんだ?」 「グレンの名前ってさ、昔悪魔と取引して無くしたんでしょ?」 「そうだ。それがどうした?」 「昨日グレン言ってなかった?グレンって周りが勝手につけたものだって。なんでグレンなの?」 確かに昨日グレンは本名を名乗らなかった。それは昔悪魔と取引したために名前を奪われたからである。 「…お前には関係ない。俺は名前なんてどうでもいいし周りがそう呼びたいなら勝手にすればいいと思ってる。」 「ふぅーん。」 グレンの冷たい対応にも少し慣れたのかミーナはサラッと聞き流した。 「…ちっ!また追ってか…もう一回空間移動するぞ!」 「え?追ってって何…て、わわわわ!」 グレンに無理やり押されてミーナは空間の穴に勢いよく吸い込まれ2人はその場から消えた。 グレンが移動したところはいつも中途半端なところだった。 どこかというと。 「何もないとこから人出てきたぞー!」 「魔法使いだ!初めて見た!」 「けどなんでこんなところに?」 そこはさっきの森を抜けると着く場所である町であったがグレンが変なところにワープしたため町の人達に余計な注目を浴びることになった。 ミーナは周囲に見られてると思うと恥ずかしさで頭がいっぱいになり挙動不審な動きをしている。 「グ、グレン…みんなに見られてるよ~…。な、なんでこんなとこに移動するのよ…」 一方グレンはこんな場面になったのにも関わらず一言。 「あ、ヤベ…間違えた。」 「無表情で間違えないでー!もう、どうするのよ!」 グレンのせいで更に人が増えてどんどん恥ずかしさが大きくなる。 「仕方ない、急いでたからな。…仕方ないからお前担いで逃げるか。」 「担ぐって…って、うわぁ!」 グレンはミーナを片手で持ち上げると脇腹に抱えて走った。 周りの人はいきなり走ってきたグレンにびっくりして道を開けた。 その時周囲の人たちは全員頭の中でこう思っただろう。 (…一体、なんだったんだろう?) 状況があまり分かってない町の人たちは唖然としていたがしばらくするとそんな事すぐ忘れて皆それぞれ自分の持ち場に移動した。 「ちょっとぉ!下ろしてよー!」 いつまでも担がれたままでは通りすがりの人からおかしな目で見られてしまうので下ろしてと頼むミーナ。 「ダメだ…追っ手が来てる。お前を下ろしたらすぐ追いついてしまう。」 「ねえ、さっきから言ってる追っ手って何?」 「っち…いつの間にここまで…もっかい移動するぞ。」 グレンはそのまま走ると目の前に空間の穴が開き、走りながらそのまま通過した。 移動した場所は最悪だった。 場所はこの町の建物の裏側で人気のない所だがそこには10人以上の騎士達と如何にも強そうな大柄なリーダーらしき人物がまるでここに移動することを予知していたかのように待ち構えていた。 「よく来たな、紅の悪魔祓い…グレン。」 大柄の男は左の腰に収納されている剣を抜くと両手で強く握りしめ構えた。 「ちっ!やっぱり騎士団か。」 「そうだ。俺は大国イフリークの魔法騎士団であるエバルフ・シュロン。貴様をずっと追いかけてきた者だ。大人しく捕まるがいい、人殺し!」 そう言うと10人の部下は一斉に剣を抜き、エバルフ同様剣を握りしめ、構えた。 グレンがずっと空間移動で逃げていたのはこの者達がグレンを狙っていることに気づいてたからである。 しかし疑問に思ったのはなぜ空間移動を使っているのにすぐ追いつくことが出来たのか。 「なんで追いついたか、そんな顔をしてるから教えてやろう。それは俺の部下の1人に未来を予知する魔導師がいるからだ。」 「予知だと?」 「ああ、そうだ。今までお前は近くに俺たちが近づくと空間移動でその場から一瞬で転移してにげる。…が、移動する場所は行き当たりばったりで回数と魔力にも限界がある。俺たちはそれを予知してこの場所に待機する事にした。そして…」 「転移なしのお前に勝ち目はない!」 エバルフはそのまま剣を振りかぶり、グレンに斬りかかろうとした。 しかし、グレンは一瞬で空間から大剣を出すとエバルフの剣を受けながした。 「…確かに俺はよく転移を使って悪魔と戦っていた。だが、お前は転移の事だけ囚われすぎて他のことは推測出来なかったみたいだな?…教えてやる。」 「俺は全ての属性を最上級で使う事ができるって事だ!」 この世の魔法は属性と魔力が備わっていないと魔法を使うことは出来ない。 魔法の源である魔力は人それぞれ質が違い、ランクで表すと 神級 最上級 中級 初級 と段階があり、大概の強い魔導師は最上級魔法を使う。 中級や初級に比べると広範囲に及ぶ魔法と圧倒的な力を駆使出来るがその分魔力の消費が激しく使いすぎると自分の身を滅ぼす事になる。 だから大抵の人は魔力の消費を抑えるために初級魔法や中級魔法を使って消費を抑えている。 次に属性は数十種類あり基本は人間1人につき1属性であり、複数持つ者もいるが使う魔力は1属性者に比べると2倍も魔力を消費する。 魔力の少ない者は二属性以上は使う事が出来ないので結果的に魔法を使う事が出来ない。 しかし、グレンはその摂理を無視し全ての属性とそれを全てにおいて最上級の魔法を使う事が可能なのである。 「ぜ、全属性だと…?ふざけるな、そんな人間いる者か!しかもその属性全てを、最上級魔法なんてまず魔力量から考えたとしても不可能に決まってる!ハッタリだ!」 グレンの言ったことを信じようとしないエバルフ。 多分エバルフでなくても他の者でも同じような反応をすると思う。 「ミーナ、ちょっと離れてろよ。」 「う、うん」 側にいたミーナは巻き添えを食わないためにグレンの後方に移動した。 グレンはミーナに安全な位置に離れているかどうか確認すると再び大剣を持ち。 「ハッタリかどうかは見てからにしろ。」 グレンは大剣を握りしめるとバチバチと剣全体が雷を帯びる。 その雷を帯びた剣を縦に振ると剣から雷の斬撃が発生し、地面をも切り裂くほどの威力でエバルフを襲う。 その斬撃をエバルフは剣で受け止め、受け止める際に防御魔法の様な者を剣に纏い雷をかき消した。 しかし、その威力は最上級魔法の一つなのでそれを止める魔力は相当なものだった。 「なんだ、あの威力は…」 「ほんの軽いウォーミングアップだ。今度は風の最上級だ。」 そう言うとグレンの全身から緩やかな竜巻が発生すると今度は身体能力が上昇し、目に見えない速さでその場から消えた。 「き、消えた…どこにいっ…」 消えた際に突風がエバルフを突き抜けた。 「ぐわぁっ!」 突き抜けた突風によって後ろにいる部下の1人が短い悲鳴を上げ、胸から血を吹き出しながら倒れた。 「な…何が起こっ…」 すると突風が止むと今度は部下全員を包み込むほどの竜巻が起こり、その勢いで発生したかまいたちの様なものが部下を切り刻んだ。 「お前たちーー!!」 竜巻は一瞬で部下を切り刻むとすぐおさまった。 すぐおさまったが斬られた部下たちはその場に倒れ込み、斬られても意識を保っていた者もいたが戦える状態ではなかった。 エバルフは斬られた部下たちを見て驚愕した。 まさかこれほどまで差があるとは… 「次はお前だな。」 するとエバルフの背後にはグレンが移動していた。 背後に取られたのを感じるとエバルフは咄嗟に距離を取って剣を構えた。 グレンはエバルフが離れると舌打ちをして言った。 「1人だけ、俺の竜巻をまるで予測したかの様に避けた奴がいた。」 「それは多分俺の部下のロフィスだ。あいつはこの中では俺の次に強い優秀な騎士だからな。」 「お前の次?今の竜巻はお前じゃ避けることが出来ないのにお前の次に強いのか?」 「何だと!?」 侮辱されたエバルフ。更に剣を握りしめ、剣先がプルプル震えていた。 「…まあいい。後で倒すだけだ。あぁ、安心しろ。今倒れた奴らは全員死んではいない。さあ、遠慮せずにかかってこい。」 挑発する様に少し口元を緩ませながら誘ってくるグレン。 その舐めた態度にイラっとしたエバルフは調子に乗るな!と言って剣を握りしめるとそこから竜巻が発生した。 「ならばこの俺も本気を出してやろう。疾風の12騎士長の力、思い知れ!」 エバルフは先ほどまでグレンが使っていた風の最上級魔法で一瞬で移動して見えなくなった。 エバルフはそのままグレンの背後に移動しそのまま剣を振り下ろす。 カキィィン! 「なっ!?…斬れない!?」 剣が当たっているのに斬られないどころか傷一つ付かないグレン。 「鋼属性の身体硬化魔法だ。こんなのは訓練次第で誰でもできる簡単な魔法だ。そんな剣じゃ斬れねーよ。」 グレンは斬りつけた状態のままのエバルフに抵抗することなく余裕があるのか魔法の説明までした。 するとグレンの体は液体みたいに変化し、その場に半径2メートルくらいの水たまりができた。 「何の真似だ!真面目に戦え!」 水たまりになったグレンを攻撃できないエバルフ。水たまりのところを踏み入れたその瞬間。 ズバババババーー!!! いきなり水たまりから出てきた水の槍が飛んできてエバルフは咄嗟の出来事に判断できずそれをまともに食らってしまった。 (なっ…何っ!?…) 「水の造形魔法だ。自分の体を液体、固体、気体に変化させることが出来る。」 そう言うと水たまりは浮き上がり出して次第にグレンの形に変わっていく。 水の槍によってダメージを負ったエバルフは立ってるのがやっとだった。 そしてこう思った。 ー殺される…このままじゃ殺される… そう思うとエバルフは体に力が入らなくなり、恐怖で震えてしまう。 「なんだ、怖気づいたか?まあ普通これだけ差を見せつけられればそうなるだろ。」 エバルフはグレンの強さに怯えてそのまま体が地面に崩れ落ちる。 (くそっ…情けない。何が12騎士長だ。何が市民のためにだ!目の前の敵に怖気づく奴がどの口で言ってるんだ…) もはやエバルフの頭には敗北の色で染まっていた。 ーもう何をやっても無駄だ。すみません、団長… 助けてー! エバルフの頭の中で突然女の子の声が聞こえた。 この声は…死んだ私の妹… するとエバルフの頭の中で昔の記憶が蘇った。 3年前、私の妹は黒いローブの男に悪魔もろとも殺された。 ー3年前 「お兄ちゃん、魔法騎士団ってどんな仕事なの?」 これはまだ俺が魔法騎士団に入ったばかりの新人だった頃、提出しなければならない書類を書いてると妹が勝手に自分の部屋に入ってきた。 妹はまだ7歳になったばかりで短いスカートをはいた年相応の子供っぽさがあった。 「こら、勝手に入ってきたらダメだろ?」 「ごめんなさい、お兄ちゃん。でも私、お兄ちゃんの仕事が気になって…」 エバルフ落ち込む妹を見て、書類の書く手を止めると妹の方を向いて。 「魔法騎士団はな、簡単に言えばヒーローなんだ。」 「ヒーロー?」 「そう。つまりこの国や家族、全ての人を守ることが俺の仕事なんだ。お兄ちゃんはそんなカッコいい人達に憧れてこの仕事を選んだんだよ。」 「ヒーロー!騎士団カッコいぃ!」 俺の言ったことに感動した妹は目をキラキラさせた。 昔の俺はどこか綺麗事のような事を言ってるが当時の私はこれぐらい純粋な夢があったのだ。 そう、この純粋な心をあの日潰されたんだ。ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
そして次の日の朝。グロードとアガレフは月の遺跡へ向かう準備をしており、王宮の外には2人を見送る為に沢山の国民達が集まっていた。2人はリオ王国内では沢山の任務を受けていたが、国外に出て何かをするのは初めてであった。更にリオ王国内では英雄の様な存在である2人は皆んなの憧れであり、国民達全員から愛される存在であった。「グロード様!アガレフ様!お気を付けて!」「ああ。行って来る。」王宮の兵士に言われたグロードとアガレフは一礼し、王宮を出た。王宮を出た途端、国民達による大きな歓声が飛び交った。「お二人共ー!どうか無事に帰って下さい!」「月の遺跡の化け物なんかに負けないで!」「グロード様とアガレフ様が組めば敵なんて居ないさ!」「そうさ!何たってリオ王国最強の魔導士だぜ!化け物なんて全部倒してくれる筈さ!」「頑張れー!!」向けられる歓声に対し、それに応える様に2人は国民達に手を挙げて振った。リオ3世とベリエルはその場に居なかったが、王宮のベランダから2人が歩いて出て行く姿を見ていた。「ベリエル。お前もいつかきっとあいつらみたいになれる筈だ。」「…はい。僕も兄さん達に追いつける様に努力します。」リオ3世は2人の姿を見つめながらベリエルに向けてそう言った。ベリエルはそれに対し表情を変える事なく、リオ3世と同じ様に2人を見つめながらそう答えた。何を思っているのか分からない程、表情が全然変化しないベリエル。グロード達と暮らしていく内に嬉しかった時の表情だけは作れる様になったベリエル。だが、大きくなってもそれ以外の感情による表情は作れない様だった。その表情の裏に潜む感情を読み取る事は誰にも出来なかった。数週間後、グロードとアガレフはようやく月の遺跡の近くに着いた。月の遺跡の周りは乾燥地帯である。現在はティラーデザートと呼ばれる砂漠地帯となっているが、それでも当時は所々に草木が生えていた。しかし月の遺跡に近づけば近づく程、乾燥が酷く草木もあまり生えていなかった。そしてようやく月の遺跡には着いた。月の形をした石像が上に飾られた神殿が遺跡の中央に建てられ、その周りには[月の民]と呼ばれる民族が住む石造の家が多数建てられている。化け物が居ると聞いていた為、酷く荒らされているイメージを持っていた2人であるが、見た感じその様な形跡は見られない
今から400年ほど昔、一人の王がいた。その王は人々に知識、魔法、武術。その全てを国民に広めていき、その中でも魔法の知識量はこの世で一番だった。王には3人の弟子がいました。その内の1人、1番弟子のグロードは無口であるが根は優しく、王の次に強大な魔力を持っていた王国最強の魔導師。そう。これはグロード・リオ・イシスという男の物語。彼は400年前の人間であるが現在も変わらず生き続けていた。その400年前の話である。400年以上前。ここは現在でいう神の遺跡と呼ばれる場所。当時はまだ4大国が建国されておらず、世界ではこの神の遺跡が1番栄えていた。神の遺跡。またの名を[リオ王国]と呼ぶ。[リオ]とは神の遺跡で祀られていた森羅万象を司る神の名であり、この世界を創造した創世神とも呼ばれている。そしてこの国の国民はこの世界の創造によって生まれ落ち、リオが眠る大地で暮らす事を許された一族。[リオの一族]とそう呼ばれていた。リオの一族は神が眠る大地に住める事への感謝を表す為、国民全員が自分のファーストネームとラストネームの間に[リオ]の名を入れていたのだった。そんなリオ王国の国王であるリオ3世。ソルロ・リオ・リュミエール。彼はこの世で初めて魔法を使えた人物であった。現在では当たり前の様に生活の中に魔法が介在しているが、この時の魔法というのは空想上のおとぎ話と同等の存在であった。しかし、リオ3世は人には魔法を使う為の魔力が先天的に備わっているという事を見つけ出した天才であった。それからリオ3世はリオ王国の生活を豊かにする為、色んな人が魔法を使える様に国中に広めていった。だが、魔法を使う為の魔力量には個人差があり、誰しもが魔力量の多かったリオ3世と同じ様には出来ずあまり生活の豊かさには直結しなかった。長年の課題であったが、それを解決に導いた人が 居た。グロード・リオ・イシスである。彼は当時10歳であったが、既にこのリオ王国の中でリオ3世に次ぐ魔法天才児であった。赤髪に優しい顔立ちのグロードはとても物静かでいつも机で魔法学の本を広げている子であった。無口であるが実直で真面目な性格の彼は生まれつき強大な魔力を保有しており、それに気付いたリオ3世から養子の誘いを受けた。元々の家族は居たのだが、6歳の頃家が貧しかったグロードは家の負担を減らす為とリオ
「グアッ!何だ…この打撃は…身体が、動かない。」 竜挐(りゅうだ)を喰らったウィリディスは身体が燃えていき、何故か分からないが身体が硬直した様な感覚に陥った。 心眼点睛によって相手の弱点を見極め、そこから技之乖離(ぎのかいり)による威力強化。 更にそれらの効果を更に向上させる戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)。 それらを併せた一点集中型の竜挐(りゅうだ)による攻撃は、相手に流れる魔力の"歪み"を的確に見つけ当てる事が出来る。 身体に流れる魔力の"歪み"とはその人の弱点となりうる急所の部分。 その急所の部分に強い外力が加わる事で魔力の流れは緩やかに停止していく。 ーー魔力の流れは生命の流れ。 ドグマが20体の悪魔を殴っただけで生命活動を停止させたのも同じ原理。 龍技を極めし者は全ての流れを理解し、それら全てを制する者でもあった。 「くそ!…身体が…それに、意識がどんどん…と…。」 魔力の歪みに竜挐(りゅうだ)を喰らったウィリディスは魔力の流れが弱まり、意識が朦朧としていた。 そしてウィリディスの動きは緩やかになっていき、意識が遠のくと全身の力が抜ける。 立ったまま肩が落ち上半身が前へと傾き俯いた。 この時点でウィリディスは戦闘不能に陥った…様に見えた。 ドォォォオオ!!! ウィリディスの全身から掌に溜めた時と同じ様な黒い魔力が溢れ出す。 「……ククク。やっとだ。やっとこのガキから解放されたぜ。」 前に俯きながらウィリディスは口を開いたが、声質とその喋り方はまるで別人の様であった。 そして顔を上げると先程とは違い、歯を剥き出しにした野生的な表情でグレンを見ていた。 「ありがとよ、悪魔祓いのガキ。このウィリディスにダメージを与えてくれて。お陰でこの身体は俺の物になったぜ。」 「何だと?…もしかして、あいつの中に居る悪魔…おい、リフェル。あいつはどんな悪魔だ?」 すぐにウィリディスの中に居る悪魔だと察したグレンは、自分の中に居る悪魔であるリフェルに確認をする為に声を掛けた。 (ああ。奴は悪魔だな。だが、今までの悪魔や獄魔とは違う性質の悪魔って感じがするな。) (俺がお前の身体を乗っ取る時と同じ。いや、あいつは完全にあのウィリディスって奴の身体の主導権を握ってやがる!) 悪
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発し
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八
その頃。エミルとミーナはアスモディウス、操られた死者。そして悪魔となって現れたカレンを相手にしていた。すると遠くで砂の巨人兵が崩れていくのが見えるのが見えた。「え?あの悪魔祓いやられちゃったの?ちょっと待って、全然使えなかったじゃん!最悪!」一瞬でやられた悪魔祓いのアクィールスに対してキレるアスモディウス。「ー広がる水龍の陣。陣に入りし者を切り刻まんとする!」すると今度はエミルが水色の魔法陣を直径100mの広さに展開した。その陣に入っている敵と入ろうとしている敵に対して水の刃が飛び交った。水の刃は多数の死者の肉体を切り刻み、戦闘不能になる程のダメージを与える。しかし、この魔法
その頃、カイルとエミルは別々の場所で悪魔の大群を相手にしていた。カイルは目の前から襲ってくる悪魔を見た。「目の前にはおよそ100体か。いや、この周囲の魔力を探ればそれ以上…」「面倒だ。纏めて一気にぶった斬る!」カイルは自身の影を直径10kmの範囲まで広げた。この3日間、魔力の流れを読む訓練をしていた為か、カイルの魔力操作の練度はかなり向上している。本来10kmまで影を広げてしまうと剣を振るっても影の端に居る敵に与えられる威力はかなり落ちてしまう。しかし魔力の流れを読める様になった今、カイルは見なくても相手の位置は勿論、身体の部位が隅々まで分かるレベルまで察知出来る様になっていた







