LOGINあの後グレンは一人で帰れそうにないミーナを家まで送り届け、今はこの町のはずれにある裏山みたいなところでパンをかじっていた。
(人の血を見た後によく飯が食えるな。) すると周りには誰もいないはずなのにどこからか声がした。 「…お前に言われたくない。」 誰もいない空間に対し返事をするグレン。端から見ると独り言を喋ってるかのようだった。 (ハハハ!それは違いねえな!てか昨日もそうだったがあの女、ミーナだったか?お前にしちゃ珍しく一人の女をやけに守ってたようだが何かあんのか?) 「…いや、別にない。ただあの女は俺に剣術を教えてくれた俺の師匠の娘だからだ。」 (あー、あのおっさんか…って、あのおっさん子供いたのか!?) びっくりしたのか声の主は思わず大声を出してしまったが周りに聞こえてはいけないためにグレンは胸を少し強めに殴った。 (あぁ、すまねえ。…それでお前がわざわざ一人の人間を助けるなんて随分優しいじゃねえか?) 「俺も一人の人間を助けるつもりなんてなかった。人間を助けたって得することはないからな。」 そう言うとグレンは手に持っていたパンを再びかじり始めるとそれ以上喋らなかった。 私は…二度も親友を失った… なんで?…なんでこんなことになるの? なんで不幸なことがこんな立て続けに起こるの?教えて?お父さんーー あれからミーナは学校でのショックが強すぎたため、帰ってきてからはずっと部屋にこもっていた。 母親が部屋越しから声をかけても返事をせず只々泣いていた。 昔撮ったお母さんとミーナそしてお父さんらしき人物が笑顔で手を繋いでいる写真を手に持って。 そして知らない間にミーナは泣き疲れて手に写真を持ったまま眠ってしまった。 気付いたらそこは真っ暗な空間に私はいた。 ここは、夢の中かな? けど何か不思議な感覚。 夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…これが夢なのかな? ミーナはよく分からないことをぶつぶつ言いながらその真っ暗な空間を歩いていく。 歩いて行くと真っ暗な空間から一人の男性が現れた。 その男性はグレンで黒いローブを着ていたが現実世界のグレンとは違い、黒髪で優しそうな顔をしていた。 「あなたは…グレンなの?」 朝に見たグレンとは全く異なる姿だったため戸惑いながら聞くミーナ。 そして目の前にいるグレンは優しそうに答えた。 「確かにここでも僕はグレンだ。君たちの言うところのね。」 「ここでも?君たちで言うところの?」 「うん。僕は本当の名前を悪魔に渡してしまったからね。全然覚えてないんだ」 「ちょっと待って!悪魔に名前を渡したってどういうこと?それにあなたはグレンなの?朝の時とは見た目も中身も全然違うし。」 グレンの言ってることを全然理解できないミーナ。 そんなミーナを見てグレンはクスッと笑う。 「確かにそうなるよね。分かった。順に追って話すよ。なぜ悪魔というものが存在する理由とかもね。」 「悪魔が存在する理由?」 「うん。10年前にね、僕は悲劇の国キュアリーハート出身なんだ。今は血の国レッドヘルになってるけどね。当時僕は兄と2人で過ごしてたんだ。あの悲劇の夜まではねーー」 夢の中のグレンは話した。 あの日の夜の赤い月と悲劇と残虐な悪魔の話。 グレンの話を聞く限りこの人は私なんかよりもずっとひどい目にあってるんだと。 自分なら耐えられるか…いや、まず精神を維持できないに決まってる。 「悪魔は本当に残酷だ。心を持たず、殺した人間を悪魔に変える魔法で繁殖し続け人間の不幸だけを望んで生きてる。」 「シェスカ達を悪魔に変えたあの人…あの人も元々は殺されて悪魔になってしまっただけの被害者なのかな?」 「多分そうだろう。最近殺された者は悪魔になっても知能は低い。だが10年前に殺された悪魔はシェスカ達よりもっと強いはずだ。…これを見てくれ。」 グレンはポケットの中から紙切れをミーナに渡した。 その紙切れには何かの魔法陣が書かれていて魔法が分からないミーナには読めなかった。 「それは僕が悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだ。これは君が持っていてくれ。」 「え、契約書だったら自分で持ってた方が…」 するとグレンの目には涙が流れていた。そして 「いや、君が持っていてくれ。今の僕…現実世界にいるグレンは悪魔との契約で心と名前を失いそして人格まで奪われた。頼む…君がグレンを…本当の僕を取り戻して欲しい。あいつは多分朝までこの町の裏山にいると思う。もう…時間だ…また今度夢で会おう。」 「ちょっと待っ…」 そこでミーナの意識は現実世界に戻った。 「ハッ!…夢…なのかな?とても不思議な場所にいた気が…そういえば…」 ミーナは夢の中でグレンから貰った紙切れを思い出し、ポケットの中を探してみた。 ポケットの中からは広げるとA4サイズくらいになる大きさで紙には魔法陣が書かれている。 確か悪魔祓いになった時の契約書みたいなものだっけ? ーそうだ! 私は夢の中でグレンに頼まれたんだった。けど、どうすれば…私にはどうすることもできない… ミーナは起きてから少し考えると夢の中でグレンに言われたことを思い出し、出た答えが ーグレンと一緒に旅をする事。 けどそんな事お母さんが許してくれるかな? うちにはお父さんがいないから私まで出て行ったらお母さん一人ぼっちになる。 お父さん今どこにいるんだろう? 「ミーナ、起きてるの?起きてるなら朝ごはん食べなさーい!」 一階からミーナを起こすために母の大きな声が聞こえてきた。 「ちょっと待ってー!学校ないんだからもう少しだけ寝させてー!」 昨日グレンが学校を悪魔ごと燃やしたせいで止むを得ずミーナの学校は廃校となった。 生き残った生徒達や先生も他にいたが全員昨日の事件のショックでとても学校どころではなかった。 「何言ってんの!学校がなくても朝は早く起きてちゃんとご飯食べなさい!」 「はぁ~い…」 ミーナは寝起きの重たい体を立ち上がらせると目をこすりながら階段を降りた。 テーブルの上にはトーストの上に目玉焼きが乗ていてその匂いが食欲をそそり、ミーナはお腹をグーッと鳴らした。 その音が異様に大きかったため母は食べていたものを思わず吐き出しそうになった。 ミーナは顔を真っ赤にしそれをごまかすためにトーストを頬張ったがそれが余計面白いためお母さんは思わず吹いて笑ってしまった。 「オー!オハアハン(もう!お母さん!)」 「ごめんごめん。あまりにもミーナの顔が面白くてついね。さ、いつまでも頬張ってないで早く飲み込んでしまいなさい。」 そう言われてトーストを飲み込むと紅茶で流し込んだ。 母はいつもそうだった。 私が前の日に嫌な事があれば深刻な話より逆に私の気持ちを和ませて元気にしてくれるのだった。 どうしようもないときにそれをされるとすごくイライラしてしまうがそれでも私のためにやってくれてるんだって思うと嬉しい気持ちの方が強く、そんな母の事が好きです。 けど、私はそんな母に家を出るなんて言えない。 今まで散々お世話になったのにそんな勝手な事できるわけない。 そんな感情が頭の中で考えてしまう。 「ねぇ、ミーナ?」 「あ、はい!何?」 いきなり呼ばれてハッとするミーナ。 「あなた、何か隠してるね?」 「え?…急にどうしたの?」 「とぼけないで。知ってるのよ。今ミーナが何か悩んでるくらい顔見れば分かるのよ。」 顔を見たら分かるって…そんな私悩んでる顔してたかな? 仕方がない。言わないと…けど昨日のことはなるべく避けて言わないと。 「あのね、お母さん。私…旅に出たいの。」 怒られる…そう思ったが意外にも母は怒らずに落ち着いていていた。 「どうして?」 どうしてって言われてもなんて答えたらいいんだろう?グレンの事を言ったら絶対反対するし…悪魔の事を言ったら絶対反対するだろうし。 「…私ね、旅をしてこの国の外に出てみたいの。そしていろんな事をこの目で見て学びたい。だから…」 「…女の子1人でで旅するのなんて危ないからダメに決まってるでしょ!」 そう言って絶対怒るだろうなぁ。 そう思うとミーナは母の反応が怖くて体が自然と小刻みに震えていた。 しかし、母はそんな反応とは違う思いもしない返答を返した。 「ミーナ。あなたはやっぱりお父さんの子ね。」 「えっ?」 「行きなさい、ミーナ。旅をする事を許します。」 「ちょっ、ちょっと待って!そんなすんなり許してくれるの!?私女よ?普通反対するんじゃないのそこは?」 まさかすんなり許してくれるとは思わずミーナは驚き、母に尋ねた。 しかし、母はまた思いもよらない事を言った。 「確かにあなたは女の子よ。しかも朝はなかなか起きないし料理も洗濯も勉強もおまけに掃除もしないから部屋は散らかしっぱなしの散々手のかかった娘よ。」 そこまで私の事聞いてないのに…掃除は確かに苦手だけどさ… けどなんでだろ?それなら普通旅する事なんて反対するに決まってる。 「でもね、それは全部私のせいなのかもしれないわ。お母さんねあなたが心配で今まで必要以上に手をかけてたのかもしれない。でもそれじゃ肝心のあなたは成長するどころかいつまでたっても甘えてしまうわ。確かに旅は危険だわ。ましてあなたが旅をするなんて心配で本当はやめてほしい。」 「お母さん。」 「でも昔お父さん言ってたわ。旅をする事で見えないものが見えてくる。見た事ない景色、国、そして厳しい現実。それら全てを乗り越えて俺は成長できたんだと思うって。…だからね…あなたも旅をしてほしい。けど無理はしないで。ゆっくりでいいの。ゆっくりと旅して…私は成長したミーナをこの目で見る事を楽しみにしてます。」 「お母さん!」 私は母の言葉に思わず泣いてしまい、母に抱きついた。 そして思った。 絶対に成長してまた帰ってくると。 私は朝ごはんを食べてからすぐに旅の準備をするためにリュックの中に着替えや非常用の物を詰め込んだ。 すぐに旅に出てしまうのはちょっと急ぎすぎだと思うがそれだと間に合わない。 旅とはいえこれは夢の中のグレンとの約束だからグレンがこの町にいる間までに家を出なければならない。 母はというとそんな急ぎで旅に出るミーナに何も言わず、笑顔で玄関まで見送ってくれた。 「行ってくるね、お母さん。」 「風邪には気をつけるのよ。あとお金は余分にあるんだから食事はちゃんと取って体調管理にも気をつけるのよ。」 「うん、分かってる。」 「それと、あなたはいつも慌てん坊だから慣れない環境にいっても落ち着いて行動するのよ?」 「分かってるよー」 「それとあと…」 「もう!分かってるよ!じゃ、行ってくる!」 あまりにも長いので少し鬱陶しく思うミーナは最後の言葉を聞かずに母に背を向けて行ってしまった。 「…ミーナ。お父さんに会ったらよろしくね。そしてたくましくなって帰ってきてね。」 ミーナが見えなくなってから母は小さな声で最後の言葉を呟いた。 家を出てから数十分後、ミーナは元々学校が会った場所の近くの裏山に着いた。 山自体は大きくなかったのでミーナはそのまま山を登りすぐに頂上に着いた。 そこには昨日学校で悪魔になったシェスカ達を殺した黒いローブを身にまとった赤髪のグレンが待っていた。 グレンはミーナを確認すると相変わらず表情の変わらない冷たい目で見てきた。 夢で会ったグレンとはまるで別人のように見えた。 「やっと来たか。」 「えっ?来るの分かってたの?」 「あぁ、どうせ俺のもう一つの人格がお前を誘導したんだろう。あいつ、勝手にお前の方に移動しやがって…」 「あなたは夢の中のグレンを知ってるの?」 「知ってるとかじゃなくてあれは俺自身だからいわゆるもう一つの人格だ。ったく、まだ俺から主導権奪えると思いやがって…」 「え、主導権?」 「お前には関係ない。…もうそろそろこの町を出るぞ。」 すると急にグレンはフードを被り、空間に穴を開けた。 「こい、お前もどうせ俺についてくるんだろ?仕方ないから連れてってやる。」 「うん、よろしくね。」 ミーナはグレンが開けた空間の穴に近づき、その穴にグレンと一緒に吸い込まれた。 「くそ!逃げられたか!…どうしますか?」 グレン達が空間の穴を開けて吸い込まれて消えたすぐに何者かが息を切らしながら舌打ちをした。 そこには4、5人の騎士のような姿をしていてどうやらグレンを狙っているようだった。 するとその中にいる大柄なリーダーのような男が 「紅の悪魔祓い…今回も悪魔を殺したせいで罪のない市民の人々の命を…許さんぞ…この魔法騎士団 12騎士長(トゥエルブ・ナイツ)の私が必ず引っ捕えてやる!お前達!あの悪魔祓いが行くとこに先回りだ!」 「はっ!」 その男が命令すると他の騎士達と共に山を降りた。 穴に吸い込まれたミーナとグレンが出た場所はミーナ達の町である(クレーアタウン)よりも少し東の森だった。 その森は地面が見えないほど草がぼうぼうに生えていて周りは木がたくさんあって前が見えない状態だった。 「とりあえず巻いたな…行くぞ、女!」 「ちょっとまって。この靴じゃ歩きにくいからもう少しゆっくり歩いてー。」 ミーナのブーツは底が少し厚いため、歩くのには少し不向きだった。 しかし、グレンは相変わらずの愛想のない表情で 「さっさと歩け。置いてかれたくなかったらな。」 そういって歩く速さを変えないグレン。 ミーナは頑張ってその速さについていこうと必死に歩いた。 「グレンー。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ?」 「なんだ?」 「グレンの名前ってさ、昔悪魔と取引して無くしたんでしょ?」 「そうだ。それがどうした?」 「昨日グレン言ってなかった?グレンって周りが勝手につけたものだって。なんでグレンなの?」 確かに昨日グレンは本名を名乗らなかった。それは昔悪魔と取引したために名前を奪われたからである。 「…お前には関係ない。俺は名前なんてどうでもいいし周りがそう呼びたいなら勝手にすればいいと思ってる。」 「ふぅーん。」 グレンの冷たい対応にも少し慣れたのかミーナはサラッと聞き流した。 「…ちっ!また追ってか…もう一回空間移動するぞ!」 「え?追ってって何…て、わわわわ!」 グレンに無理やり押されてミーナは空間の穴に勢いよく吸い込まれ2人はその場から消えた。 グレンが移動したところはいつも中途半端なところだった。 どこかというと。 「何もないとこから人出てきたぞー!」 「魔法使いだ!初めて見た!」 「けどなんでこんなところに?」 そこはさっきの森を抜けると着く場所である町であったがグレンが変なところにワープしたため町の人達に余計な注目を浴びることになった。 ミーナは周囲に見られてると思うと恥ずかしさで頭がいっぱいになり挙動不審な動きをしている。 「グ、グレン…みんなに見られてるよ~…。な、なんでこんなとこに移動するのよ…」 一方グレンはこんな場面になったのにも関わらず一言。 「あ、ヤベ…間違えた。」 「無表情で間違えないでー!もう、どうするのよ!」 グレンのせいで更に人が増えてどんどん恥ずかしさが大きくなる。 「仕方ない、急いでたからな。…仕方ないからお前担いで逃げるか。」 「担ぐって…って、うわぁ!」 グレンはミーナを片手で持ち上げると脇腹に抱えて走った。 周りの人はいきなり走ってきたグレンにびっくりして道を開けた。 その時周囲の人たちは全員頭の中でこう思っただろう。 (…一体、なんだったんだろう?) 状況があまり分かってない町の人たちは唖然としていたがしばらくするとそんな事すぐ忘れて皆それぞれ自分の持ち場に移動した。 「ちょっとぉ!下ろしてよー!」 いつまでも担がれたままでは通りすがりの人からおかしな目で見られてしまうので下ろしてと頼むミーナ。 「ダメだ…追っ手が来てる。お前を下ろしたらすぐ追いついてしまう。」 「ねえ、さっきから言ってる追っ手って何?」 「っち…いつの間にここまで…もっかい移動するぞ。」 グレンはそのまま走ると目の前に空間の穴が開き、走りながらそのまま通過した。 移動した場所は最悪だった。 場所はこの町の建物の裏側で人気のない所だがそこには10人以上の騎士達と如何にも強そうな大柄なリーダーらしき人物がまるでここに移動することを予知していたかのように待ち構えていた。 「よく来たな、紅の悪魔祓い…グレン。」 大柄の男は左の腰に収納されている剣を抜くと両手で強く握りしめ構えた。 「ちっ!やっぱり騎士団か。」 「そうだ。俺は大国イフリークの魔法騎士団であるエバルフ・シュロン。貴様をずっと追いかけてきた者だ。大人しく捕まるがいい、人殺し!」 そう言うと10人の部下は一斉に剣を抜き、エバルフ同様剣を握りしめ、構えた。 グレンがずっと空間移動で逃げていたのはこの者達がグレンを狙っていることに気づいてたからである。 しかし疑問に思ったのはなぜ空間移動を使っているのにすぐ追いつくことが出来たのか。 「なんで追いついたか、そんな顔をしてるから教えてやろう。それは俺の部下の1人に未来を予知する魔導師がいるからだ。」 「予知だと?」 「ああ、そうだ。今までお前は近くに俺たちが近づくと空間移動でその場から一瞬で転移してにげる。…が、移動する場所は行き当たりばったりで回数と魔力にも限界がある。俺たちはそれを予知してこの場所に待機する事にした。そして…」 「転移なしのお前に勝ち目はない!」 エバルフはそのまま剣を振りかぶり、グレンに斬りかかろうとした。 しかし、グレンは一瞬で空間から大剣を出すとエバルフの剣を受けながした。 「…確かに俺はよく転移を使って悪魔と戦っていた。だが、お前は転移の事だけ囚われすぎて他のことは推測出来なかったみたいだな?…教えてやる。」 「俺は全ての属性を最上級で使う事ができるって事だ!」 この世の魔法は属性と魔力が備わっていないと魔法を使うことは出来ない。 魔法の源である魔力は人それぞれ質が違い、ランクで表すと 神級 最上級 中級 初級 と段階があり、大概の強い魔導師は最上級魔法を使う。 中級や初級に比べると広範囲に及ぶ魔法と圧倒的な力を駆使出来るがその分魔力の消費が激しく使いすぎると自分の身を滅ぼす事になる。 だから大抵の人は魔力の消費を抑えるために初級魔法や中級魔法を使って消費を抑えている。 次に属性は数十種類あり基本は人間1人につき1属性であり、複数持つ者もいるが使う魔力は1属性者に比べると2倍も魔力を消費する。 魔力の少ない者は二属性以上は使う事が出来ないので結果的に魔法を使う事が出来ない。 しかし、グレンはその摂理を無視し全ての属性とそれを全てにおいて最上級の魔法を使う事が可能なのである。 「ぜ、全属性だと…?ふざけるな、そんな人間いる者か!しかもその属性全てを、最上級魔法なんてまず魔力量から考えたとしても不可能に決まってる!ハッタリだ!」 グレンの言ったことを信じようとしないエバルフ。 多分エバルフでなくても他の者でも同じような反応をすると思う。 「ミーナ、ちょっと離れてろよ。」 「う、うん」 側にいたミーナは巻き添えを食わないためにグレンの後方に移動した。 グレンはミーナに安全な位置に離れているかどうか確認すると再び大剣を持ち。 「ハッタリかどうかは見てからにしろ。」 グレンは大剣を握りしめるとバチバチと剣全体が雷を帯びる。 その雷を帯びた剣を縦に振ると剣から雷の斬撃が発生し、地面をも切り裂くほどの威力でエバルフを襲う。 その斬撃をエバルフは剣で受け止め、受け止める際に防御魔法の様な者を剣に纏い雷をかき消した。 しかし、その威力は最上級魔法の一つなのでそれを止める魔力は相当なものだった。 「なんだ、あの威力は…」 「ほんの軽いウォーミングアップだ。今度は風の最上級だ。」 そう言うとグレンの全身から緩やかな竜巻が発生すると今度は身体能力が上昇し、目に見えない速さでその場から消えた。 「き、消えた…どこにいっ…」 消えた際に突風がエバルフを突き抜けた。 「ぐわぁっ!」 突き抜けた突風によって後ろにいる部下の1人が短い悲鳴を上げ、胸から血を吹き出しながら倒れた。 「な…何が起こっ…」 すると突風が止むと今度は部下全員を包み込むほどの竜巻が起こり、その勢いで発生したかまいたちの様なものが部下を切り刻んだ。 「お前たちーー!!」 竜巻は一瞬で部下を切り刻むとすぐおさまった。 すぐおさまったが斬られた部下たちはその場に倒れ込み、斬られても意識を保っていた者もいたが戦える状態ではなかった。 エバルフは斬られた部下たちを見て驚愕した。 まさかこれほどまで差があるとは… 「次はお前だな。」 するとエバルフの背後にはグレンが移動していた。 背後に取られたのを感じるとエバルフは咄嗟に距離を取って剣を構えた。 グレンはエバルフが離れると舌打ちをして言った。 「1人だけ、俺の竜巻をまるで予測したかの様に避けた奴がいた。」 「それは多分俺の部下のロフィスだ。あいつはこの中では俺の次に強い優秀な騎士だからな。」 「お前の次?今の竜巻はお前じゃ避けることが出来ないのにお前の次に強いのか?」 「何だと!?」 侮辱されたエバルフ。更に剣を握りしめ、剣先がプルプル震えていた。 「…まあいい。後で倒すだけだ。あぁ、安心しろ。今倒れた奴らは全員死んではいない。さあ、遠慮せずにかかってこい。」 挑発する様に少し口元を緩ませながら誘ってくるグレン。 その舐めた態度にイラっとしたエバルフは調子に乗るな!と言って剣を握りしめるとそこから竜巻が発生した。 「ならばこの俺も本気を出してやろう。疾風の12騎士長の力、思い知れ!」 エバルフは先ほどまでグレンが使っていた風の最上級魔法で一瞬で移動して見えなくなった。 エバルフはそのままグレンの背後に移動しそのまま剣を振り下ろす。 カキィィン! 「なっ!?…斬れない!?」 剣が当たっているのに斬られないどころか傷一つ付かないグレン。 「鋼属性の身体硬化魔法だ。こんなのは訓練次第で誰でもできる簡単な魔法だ。そんな剣じゃ斬れねーよ。」 グレンは斬りつけた状態のままのエバルフに抵抗することなく余裕があるのか魔法の説明までした。 するとグレンの体は液体みたいに変化し、その場に半径2メートルくらいの水たまりができた。 「何の真似だ!真面目に戦え!」 水たまりになったグレンを攻撃できないエバルフ。水たまりのところを踏み入れたその瞬間。 ズバババババーー!!! いきなり水たまりから出てきた水の槍が飛んできてエバルフは咄嗟の出来事に判断できずそれをまともに食らってしまった。 (なっ…何っ!?…) 「水の造形魔法だ。自分の体を液体、固体、気体に変化させることが出来る。」 そう言うと水たまりは浮き上がり出して次第にグレンの形に変わっていく。 水の槍によってダメージを負ったエバルフは立ってるのがやっとだった。 そしてこう思った。 ー殺される…このままじゃ殺される… そう思うとエバルフは体に力が入らなくなり、恐怖で震えてしまう。 「なんだ、怖気づいたか?まあ普通これだけ差を見せつけられればそうなるだろ。」 エバルフはグレンの強さに怯えてそのまま体が地面に崩れ落ちる。 (くそっ…情けない。何が12騎士長だ。何が市民のためにだ!目の前の敵に怖気づく奴がどの口で言ってるんだ…) もはやエバルフの頭には敗北の色で染まっていた。 ーもう何をやっても無駄だ。すみません、団長… 助けてー! エバルフの頭の中で突然女の子の声が聞こえた。 この声は…死んだ私の妹… するとエバルフの頭の中で昔の記憶が蘇った。 3年前、私の妹は黒いローブの男に悪魔もろとも殺された。 ー3年前 「お兄ちゃん、魔法騎士団ってどんな仕事なの?」 これはまだ俺が魔法騎士団に入ったばかりの新人だった頃、提出しなければならない書類を書いてると妹が勝手に自分の部屋に入ってきた。 妹はまだ7歳になったばかりで短いスカートをはいた年相応の子供っぽさがあった。 「こら、勝手に入ってきたらダメだろ?」 「ごめんなさい、お兄ちゃん。でも私、お兄ちゃんの仕事が気になって…」 エバルフ落ち込む妹を見て、書類の書く手を止めると妹の方を向いて。 「魔法騎士団はな、簡単に言えばヒーローなんだ。」 「ヒーロー?」 「そう。つまりこの国や家族、全ての人を守ることが俺の仕事なんだ。お兄ちゃんはそんなカッコいい人達に憧れてこの仕事を選んだんだよ。」 「ヒーロー!騎士団カッコいぃ!」 俺の言ったことに感動した妹は目をキラキラさせた。 昔の俺はどこか綺麗事のような事を言ってるが当時の私はこれぐらい純粋な夢があったのだ。 そう、この純粋な心をあの日潰されたんだ。[ライクとニケル]サイド。目の前の悪魔達に対し、2人共雷神と風神の姿へと変貌した。「一気に潰してやるよ!」「魔力操作"極(ぎょく)"!火雷(ほのいかづち)!」ライクの背中の上から2番目の鼓が光ると右手から高電圧の雷が溜め込まれる。今までの火雷はそのまま一瞬で放たれるも、魔力操作"極(ぎょく)"により溜め込み時間が普段より10秒くらい掛かる。溜め込まれた右手の雷を悪魔達に向けて一筋の矢の様にして一直線に放たれる。ドカァァァン!!!炎を帯びた雷の大爆発は魔力操作"極(ぎょく)"により、普段よりも10倍以上の威力を発揮した。その威力により、1回の爆発で100体以上の悪魔が一気に消滅した。「っしゃあ!やりぃ!」魔力操作"極(ぎょく)"が上手くいき、調子付くライク。ーーこのままやってけば、あっという間に。しかし、そんな希望は一瞬で崩れ去る。ライクの雷で消滅した側から、再び後ろの方から悪魔が再生していった。「いぃっ!?何だ!?何でまた再生したんだ!?」「…成程。どうやらこの修行、悪魔達を全員殺すのが目的じゃないみたい。」「どう言う事だ、ニケル?」「つまり、この永遠に湧き出てくる悪魔を3日間、休みなく戦い続けなければいけないって事だ。」そう。ニケルが言った通り、2人の修行はこの悪魔達を全員倒す事が目的ではない。絶え間なく湧き出てくる悪魔達を魔力操作"極(ぎょく)"を使って戦い続ける為の持久性を鍛える事が目的であった。「だからライク。そんな大技を放ったところで意味は無い。ここからはペース配分を考えて戦わなければいけない。」「成程な。効率良く戦えって事か?」「それだけじゃ無い。こいつらは魔力操作"極(ぎょく)"でしか倒せない。だからもっと成功率も上げないと。」2人は雷神と風神の力による効果で更なる力を得たのだが、持続性が無いのが欠点である。そしてもう一つ。これはライクとニケル自身の問題。2人は雷神と風神の力を過信し、いつしかそれに頼る戦いが定着しつつあった。この修行では2人のその定着した悪癖を直すのに打って付けであったが、それは只直すと言うにはあまりにも過酷な修行であった。ライクとニケルはまだ完成したばかりの魔力操作"極(ぎょく)"はまだ不安定であり、失敗する事の方が多い。その上、魔力を溜める時間に10秒必要というのも、実戦
その後、グロードの空間移動で全員をカイルの家の前へと転移させた。カイルが家に入るとカイルの母親であるカルラが出迎えてくれた。「おかえり、皆んな。あれ?今日はまた知らない人が居るみたいね。」初対面であるグロードとネルがカルラの目に入った為、すぐにグロードはカルラの前に出て挨拶をした。「申し遅れました。自分の名前はグロードと言います。元々ここに居るライクとニケル、フィナと旅を同行していた者です。そしてこの隣に居るのはネルという者です。」グロードは丁寧にカルラに挨拶をすると、隣に居たネルを手で指し示した。「ネルと言います。」ネルはグロードに続けて一言だけ挨拶をした。「母上。この人達もしばらくの間、泊めて欲しいんだけど…。」カイルは少し躊躇いながら自分の母親であるカルラに尋ねた。幾らカイルの家が大きく親が寛大だからといって、こう何人も居候の人が増えると言うのは母親への負担が大きくなると思ったからだ。流石に迷惑かな?そう思ったカイルであったが。「ええ、良いですとも!さ、上がって下さい!」「良いんですか?」カルラが笑顔で快諾した事が予想外だった為、グロードは戸惑っていた。「はい!何だかね、カイルが色んな人を連れて来てくれるお陰で、広くてどこか寂しかった我が家が楽しい空間に変わってる感じがしてね。」「それに、今更2人増えたところで我が家は何も変わらないわよ。だから、いつまでも居て大丈夫ですよ。」「そう言って頂けるなら嬉しい限りです。本当に、ありがとうございます。」グロードはカルラの器の広さに感謝しながら再びお辞儀して感謝の気持ちを伝える。その姿を見てネルもグロードと同じ様にお辞儀した。「あり…がとう、ございます。」相変わらず、感謝の気持ちを伝えるのが下手なネルはぎこちなくそう言った。「では、どうぞ中に入って下さい!」そう言って全員カイルの家の中へと入って行く。中に入るとカイルの妹であるレイアがカイル達に気付いた。「あ、お兄ちゃん!皆んな!おかえり!」レイアは居間で本を読んでいたが、カイル達に気付くと本を閉じてカイル達の方に駆け寄った。「レイアちゃん、ただいま!」「ミーナちゃん!…ムッ。修行した後はあまり近づかないで欲しいです!」ミーナはレイアが可愛いあまりほっぺをスリスリしようとしたが、汗の匂いもあって近寄って欲しくない
カイルの黒帝剣技は影の中に居る相手を斬りつけるが、距離が離れれば離れる程威力が低下する。以前ベリエル(ハイド)に負けたカイルもその弱点を見極められて十分な力を発揮出来なかった。しかし、今回は違う。カイルは特別強く刀を振るった訳では無く、グロードとも距離が離れていたのに鋼鉄の皮膚を持つグロードに傷を与えた。「たった一振りでグロードに傷を付けた!?」「凄い威力だ。あのグロードさんに傷を与えるなんて、僕達は物凄く苦労したのに。…やっぱりあの刀のお陰なのかな?」ライクとニケルは初見でグロードに傷を付けたカイルを見て驚きながらそう言った。驚いていたのは当の本人であるカイルも同じであり、カイルは手に持った二刀の刀を見つめていた。「この刀…凄い力だ。それ程強く振るっていないのにこの威力。」エミルやミーナ、フィナもカイルの斬撃を見て、ライクやニケル同様に感嘆(かんたん)した。ただ1人、ネルを除いては。ネルはカイルの斬撃を真剣な表情で黙ったまま何も喋らない。一方、傷を付けられたグロードは例の不死の肉体により、傷口はすぐに再生した。「成程。これは黒帝剣技か。それに刀との相性が抜群の影の間接的攻撃。それに加えてこの威力…。」グロードはカイルに与えられた斬撃から、ブツブツと言いながら分析をしていた。「…よし、じゃあカイル君。その刀に自分の影を纏ってみてくれ。」「えっ?何でその事を知ってるんですか?」「良いから早く。」そう急かされたカイルは言われた通り、自身の影を暗影蛇(あんえいだ)と黒纏蛇(こくてんだ)に纏った。纏った瞬間、カイルの目の色はいつもの様に赤く変化したがその直後、いつもとは違う感覚が起こった。「ぐっ…視界が一瞬だけ淀んだ…何だ、これは?」まるで胴のキツイ眼鏡を付けた様な視界が一瞬訪れたが、その後は特に異常は見られない。いや、いつもより影の動きが鮮明に捉えやすかった。「…よし、じゃあ俺に攻撃してみなさい。」「分かりました!」そう言った直後、カイルは目に見えないスピードでグロードの間合いに入る。そしてグロードの影を斬りつけようとした時だった。グロードはカイルが右手に持つ刀を振おうとした瞬間、左足で蹴り上げてそれを止めた。蹴られたカイルの右腕は上に弾かれてしまい、それにより体勢が後方へとぐらついた。「うわっ!…!?」すると
グロードは魔力感知に加えて、周囲の空気振動や電磁波を読み取って相手の特徴を把握する事が出来る。しかし、ベリエルは魔力の質や量を変化させる上に見た目も変化させる事が可能である為、グロードの感知魔法ではベリエルの特徴を捉えられなかったのだ。「俺は風魔法の微弱な風を相手に当てる事で、相手の身体の輪郭を感じ取り、相手との距離感を把握出来る。」「そして雷属性で相手の身体から発する電磁波を読み取る魔法を使えば、例え変身魔法を使っても見分ける事も可能だ。」「この魔法の効果は5000km圏内まで発揮する。だから俺は目が見えなくてもみんなの居る場所がすぐに分かるんだ。」「なっ?凄いだろ、グロードは。」グロードが自身の感知魔法について説明した後、ドヤ顔で誇らしげに言うライク。「何でお前がドヤってるんだよ。まあ、確かに。規格外だよ、グロードさんは。」「確かにそうね。5000km圏内…魔力の流れを読むとかの次元じゃ無いわ。」カイルとエミルは魔力の流れを読む修行をしたお陰で、クレーアタウンでの戦いではその修行の成果をしっかり発揮出来た。ミーナとカイルとエミルは小さな国であれば悪魔の居場所を特定出来るくらいの魔力感知能力はある。しかし、所詮は小さな国程度。グロードの魔力感知範囲は5000km圏内と規格外であり、現実世界の日本で例えるなら日本国土の約52倍もの面積に相当する。しかも魔力感知能力もずば抜けており、魔法が使えない微弱な魔力の持ち主が数km離れた場所に居ても感知する事が出来る。当然、魔力の流れを読む修行をしたからこそカイルとエミルはこの規格外なグロードとの差をきちんと理解していた。「だが、これ程範囲を広げて探してもベリエルを400年間見つける事が出来なかった。それなのに20年前、突然奴は俺の感知魔法に引っ掛かった。」「その時の感知した感覚は、何も無い場所から突然現れた様な感覚。まるでわざと見つかりに来たかの様な現れ方だった。」そう。20年前にベリエルを魔力感知で見つけた際、この様に突然現れた様な感覚に当時のグロードは驚いていたのだ。「つまり、ベリエルはわざと見つかる為に本来の魔力と姿を戻した。そういう事か?」「その通りだ、ネル。奴は自分の計画を俺に邪魔されたく無かった。だから20年間、俺は奴に封印された。」「20年間!?…じゃあ、俺達と神の遺跡
この世界を作った神が居ました。その神の名は理王(リオ)。森羅万象を司る神にして、全ての万物、生物を生み出した世界の始祖となる存在。数億年前、理王(リオ)は3つの世界を作り出した。1つ目の世界は、神や天使が存在する[天界]。2つ目の世界は、悪魔が存在する[魔界]。3つ目の世界。それが今現在、人間達が暮らしている世界である。元々は月の遺跡に暮らしていた古の化け物が先に生み出されたのだが、2つの世界を先に作り出した時に理王(リオ)はこう考えた。「色んな種族や生物が存在する事で、その世界に変化が起きるのでは?」そう思った理王(リオ)は古の化け物と一緒に人間という生き物を3つ目の世界に生み出した。人間だけでは無く、動植物や魚、鳥など色んな生き物を3つ目の世界に生み出し、その生物達が暮らせる様に大陸を作り出した。この沢山の種族が生み出され、混在した3つ目の世界を理王(リオ)は[混界(こんかい)]と呼んだ。人間は寿命が短い代わりに沢山の変化をもたらし、その変化は人々の生活をより豊かにしていく文明の発展へと繋がった。天界と魔界には起きなかった変化。これが天使や悪魔には無い人間の才能であり、長所であった。天界、魔界、混界。この3つの世界全ては本来交わる事が無い。しかし、天界と魔界。この2つは違う。この2つの世界は同じ時期に対となる関係として生み出された。そう、これは理王(リオ)が最初に犯した過ち。天界を統括する理王(リオ)と相対する存在が、魔界の悪魔として生まれてしまったのだ。その悪魔は魔界の王として、理王(リオ)の力を奪う為に1億年前に天界を襲った。天使と悪魔の戦争。そして理王(リオ)は悪魔の王に勝利した。しかし、あまりにも強過ぎる悪魔の王を完全には消す事が出来なかった。その代わりに、理王(リオ)は2度と悪魔の王を復活させない為に、彼の魂を7つに分割した。それが7つに分断されし悪魔である獄魔7将。リフェルとベルゼバブ達はこうして生まれたのであった。魂を7つに分割した理王(リオ)は、その魂を新たな悪魔の肉体の器に入れ込んだ。そして残った悪魔の王の肉体は2度と復活出来ない様に別次元にある混界に封印した。本来悪魔は別次元では肉体を維持出来ない仕組みになっているのだが、その悪魔の王は肉体を維持出来る。悪魔なのに、神と同等の力を持ってい
「いつもありがとうね、リーナさん。」「いえいえ、私にはこれくらいの事しか出来ませんので。」カイルの家ではカイルの母親とミーナの母親であるリーナが、皆んなの食事を作って準備していた。クレーアタウンを悪魔に襲撃され、住む家が無くなったリーナは娘のミーナと一緒に居候させてもらっていた。(第34話参照)家族以外の人が増えるという事は家事をする者の負担が増えるという事だが、主婦としての家事スキルが高いリーナのお陰でカイルの母親は物凄く助かっていた。「リーナさんが居てくれるお陰で家事がだいぶ楽になったわ。」「それに、あなたが作る料理はどれも絶品で凄く美味しいからね。今日も頼りにしてるわよ!」「ありがとうございます、カルラさん。」カルラとはカイルの母親の名前である。2人はお互い歳が近い為、普段カイル達が居ない間に家事を早く済ませ、暇になってから色んな話に花を咲かせていた。確かにリーナの料理は作るもの全て絶品であったが、彼女は料理の腕をずっと磨き続けていた。その理由は、いつかアガレフが帰ってきた時に沢山料理を食べてもらう為であった。自分の料理が好きだと言ってくれた夫に、沢山自分の料理を食べてもらう為に。しかし、その願いは叶わなかったが今はその料理の腕が誰かの為に活かされており、それがリーナにとっても嬉しい事だった。そしてカイル達がノーム王のところから帰ってきた。「ただいま帰りました、母上!」カイルが帰ってきた為、玄関から自分が帰ってきたと伝える声が母達の居る部屋まで伝わってきた。廊下からバタバタと多くの足音が聞こえてくる。他にも一緒に暮らしているミーナとエミル、フィナ、ライク、ニケルも一緒に帰ってきたからだ。そして帰った6人は母たちの居る部屋にゾロゾロと入ってきた。「皆んなおかえりー!ご飯もう少しで出来るからね。」「ありがとうございます、カルラさん。私も手伝います。」「私もやります!」フィナが言うとエミルも便乗し、カルラ達の手伝いをしようとした。「ありがとうね。助かるわ、フィナさんにエミルちゃん。2人にはちょっとこのスープの味を見て良い感じに整えて欲しいの。」カルラは殆ど作っていたスープの最終調整をを2人に任せた。フィナとエミルは2人とも料理が得意である為、時間がある時などはカルラとリーナに手伝いを頼まれる事があった。しかし、
時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「
この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなく
「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日
その頃、ミーナ達はグレンとカイルが乗った馬車と離れてしまい、現在は残った人達を騎士団達は馬車の外に集めさせた。しかし、集められた一般の人達は数日前の事件から現在まで散々な目に遭っている為不満が高まっているのか騎士団の人達に文句を言っていた。「どういう事なんだよ!馬車が無くてどうやって移動するんだ!」「お前ら騎士団だろ!俺たち今物凄く困ってるの見てわかんねーのかよ!」「そうよ!私達はこれからどーなるのよ!」「何とかしろ!騎士団だろ!」口々に罵声を飛ばす一般の人達。無理もない。つい数日前までは平和に過ごしていたのだ。急にこんな事が続けば誰だって普通じゃいられなくなる。しかし、一般







